畑を相続したときの手続き|使わない場合の選択肢

畑が相続財産に入っていて、自分で耕す予定はない。
先に決めるのは売るかどうかではなく、その畑が市街化区域の内か外かだ。外なら農地としての課税が続き、内なら宅地並みに評価されて毎年の税が桁で動く。貸す・売る・手放すの見込みも、ここでほぼ決まっている(2026年7月31日確認)。
この記事の目次
その畑がいまも農地かどうかは、登記の地目ではなく現況で決まる
農地法が見ているのは登記簿の地目ではなく現況だ。農地とは耕作の目的に供される土地をいう(農地法第2条第1項)。国税庁も、地目は課税時期の現況で判定するとし、耕作されていなくても耕作しようとすればいつでも耕作できる状態の土地は農地に含まれるとしている(質疑応答事例 土地の地目の判定 農地、2026年7月31日確認)。草を刈ればすぐ植えられるなら農地で、売買や転用に農地法の手続きが要る。木が生えて山林原野の様相なら農地でない可能性があり、判断するのは農業委員会だ。
周南市は、農業上の利用が見込めない農地に非農地通知を送ると案内している(2026年2月5日更新/2026年7月31日確認)。通知が届いた土地は農地台帳から除外され、固定資産税の評価が農地以外へ替わる場合があり、通知書を添えて地目変更登記を申請でき、転用や所有権移転で農地法上の手続きが要らなくなる。所有者の側から申請する道もあり、福岡市は非農地証明の制度を置いている(2023年5月10日更新/2026年7月31日確認)。
市街化区域の内か外かで、畑の固定資産税は桁が変わる
毎年出ていく金額は面積よりも区域で決まる。市街化区域の外の一般農地は農地としての評価で低く抑えられ、中の農地は宅地並みに評価される。静岡市は、新たに宅地並み課税となった年度から4年度間は軽減率が初年度0.2、2年度0.4、3年度0.6、4年度0.8と段階的に上がるとしている(2026年3月18日更新/2026年7月31日確認)。いずれも前年度の課税標準額から計算した額と比べて少ないほうの額になる。
- 固定資産税=その年度の評価額×特例率(3分の1)×軽減率×税率1.4パーセント
- 都市計画税=その年度の評価額×特例率(3分の2)×軽減率×税率0.3パーセント
浜松市は、平成19年4月に政令指定都市となり三大都市圏の特定市に該当したため、平成20年度の課税分から特定市街化区域農地として宅地並み課税をしている(2026年4月1日更新/2026年7月31日確認)。同じ畑でも市の位置づけで課税の側が動く。
最初にやるのはこの2つだ。
- 市町村の都市計画の窓口で、市街化区域の内か外かを確認する
- 固定資産税の課税明細書で、評価額と課税標準額、地目の記載を見る
戻る道もある。静岡市は、生産緑地地区の指定を受けた場合や市街化調整区域に編入された場合は農地としての課税になるとしている。
宅地並み評価がいくらになるかは、近隣の実勢で決まる
市街化区域の畑は、近隣の宅地の価格から造成費を引いた水準で評価されます。桁の見当をつけるだけなら、売る意思が固まる前でも構いません。
無料で査定額を調べる生産緑地の畑は、相続のときだけ扉が開く
市街化区域の中にありながら農地としての課税が続く畑がある。生産緑地の指定を受けた農地で、建築や造成の制限と引き換えに税が抑えられている。
大阪市は、指定の告示後30年が経過したとき(特定生産緑地に指定されていない場合に限る)と、主たる農業従事者の死亡または故障等により農業の継続ができなくなったときに市長へ買取申出を行えると案内している。死亡が事由なら、申し出るのはその相続人だ(2026年7月16日更新/2026年7月31日確認)。
手順は、主たる従事者についての証明書を受け、買取申出書を提出する(受理された日が申出日)。申出日から1か月以内に市が買い取るかを通知し、3か月以内に所有権の移転(相続その他の一般承継による移転を除く)がなければ行為の制限が解除される。申し出なければ指定は続く。
相続税の評価は逆向きに動く。国税庁は、課税時期に買取りの申出ができない生産緑地の控除を、申出ができる日までの期間に応じて5年以下10パーセントから25年超30年以下35パーセントまでと定める一方、申出が行われていた、または申出をすることができる生産緑地の控除は5パーセントとしている(タックスアンサーNo.4626、2026年7月31日確認)。制限が外せる分だけ控除は縮む。税額の計算は税理士の領域だ。
相続の直後に来る手続きと、畑にかかる実費
期限のある手続きは、耕すかどうかを決める前に来る。相続で農地の権利を取得したら農業委員会へ届出、相続登記は取得を知った日から3年以内(農林水産省・農地相続ポータル、2026年7月31日確認)。期限と過料、共有のときの出し方は農地を相続したらまず何をする?届出と3つの選択肢にまとめてある。
| 項目 | 金額 | 出どころ |
|---|---|---|
| 相続登記の登録免許税 | 不動産の価額の1000分の4 | 国税庁・No.7191 |
| 売買で移転するときの登録免許税 | 1000分の20(令和8年3月31日までに受ける登記は1000分の15) | 同 |
| 非農地証明の手数料 | 1筆につき600円(福岡市の例) | 福岡市 |
| 市街化区域内の転用の届出 | 提出から受理書の交付まで約2週間(太子町の例) | 太子町 |
登録免許税は原則として固定資産課税台帳の価格が課税標準になる(国税庁・No.7191、2026年7月31日確認)。純農地の評価は低く、畑1枚あたりの税額は小さい。増えるのは筆数だ。見た目は1枚でも登記上は数筆に分かれていることがあり、名寄帳か登記事項証明書で数えておく。
耕さない畑に、毎年発生する仕事
農業委員会は年1回、農地の利用状況調査を行っている(周南市/福岡市、2026年7月31日確認)。戻せないと判断されれば非農地通知が届き、まだ戻せるなら遊休農地として利用意向調査の対象になる。放置は選択肢ではなく、どちらかに振り分けられる。遊休農地の固定資産税の分岐は農地を相続したらまず何をする?届出と3つの選択肢で扱っている。
草刈りの外注費は面積と傾斜、刈った草の搬出の有無で変わり、全国で通用する一次データを編集部は持っていない。シルバー人材センターと地元の造園業者に、地番と面積、年に何回かを伝えて見積もりを取るのが早い。
貸す。畑には市民農園という出口が残っている
貸したときにいくら入るかは数字が出ている。農地法第52条を根拠に、各地の農業委員会が実際の賃借料を毎年集計しているからだ。さいたま市が公表した令和7年1月から12月までに締結(公告)された賃貸借は、10アール当たり年額で次のとおり(2026年1月13日更新/2026年7月31日確認)。
| 区分 | 平均額 | 最高額 | 最低額 |
|---|---|---|---|
| 田 | 5,600円 | 21,500円 | 1,000円 |
| 畑 | 8,200円 | 40,200円 | 4,000円 |
10アールは1,000平方メートル、約300坪だ。300坪を丸1年貸して1万円に届かず、固定資産税は所有者に残る。収入ではなく、草が伸びるのを止める手当てとして意味が出る。
畑に固有の出口が市民農園だ。千葉県が公開する特定農地貸付法の開設手続では、地方公共団体と農業協同組合以外は市町村との貸付協定の締結が要り、貸付規程の作成、農業委員会への申請と承認、農園の整備、公募と賃貸借契約と続く(2024年2月29日更新/2026年7月31日確認)。個人が1枚の畑のためにここまで踏むのは重い。現実的なのは、開設者になる市町村・農業協同組合・企業・NPOに貸す側で入ることだ。窓口は届出と同じ農業委員会になる。
売る。農地のまま売るか、非農地にしてから売るか
売り方は2本だ。農地のまま売る場合、買い手の側に農地法第3条の許可が要る。耕す人にしか売れないので、値段より先に相手を探す作業になる。
転用して売る場合は、畑の区分で上限が決まる。上越市は、市街化区域内の農地は許可申請が不要で届出が必要とし、受理されないと転用に着手できないとしている(2026年5月13日更新/2026年7月31日確認)。区域外は許可の世界だ。
| 区分 | 内容 | 許可の方針 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 農業振興地域整備計画で農用地区域とされた区域内の農地 | 原則として許可しない |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内で特に良好な営農条件を備えた農地 | 原則として許可しない |
| 第1種農地 | 10ヘクタール以上の一団の農地など、良好な営農条件を備えている農地 | 原則として許可しない |
| 第2種農地 | 市街地化が見込まれる農地、または山間地等の生産性の低い小集団の農地 | 既存宅地や第3種農地に立地できない場合に限り許可 |
| 第3種農地 | 市街地化の傾向が著しい区域にある農地 | 許可できる |
表のどこに畑が乗っているかで天井が決まっている。区分は農業委員会に地番を伝えれば分かる。順番は区分の確認、転用の可否、そのうえで値段だ。逆から入ると、転用できない畑に宅地の相場を当てて期待だけが上がる。
農地のままの値段と、転用できた場合の値段は別物
区分を確かめたら、実際にどのくらいで動くのかを複数社に当てておくと、農業委員会との相談に持ち込む材料が揃います。相場を知るだけの利用でも問題ありません。
無料で査定額を調べるいらない、相続したくないときに残っている出口
畑だけを外して他の財産を受け取ることはできない。相続放棄は財産ごとに選べず、相続を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きだ。放棄後に残る管理の話はいらない農地を相続する前に知っておく3つの逃げ道、田に絞った比較は田んぼを相続したくないときに取れる4つの手にある。
受け継いだあとの出口が相続土地国庫帰属制度だ。農林水産省の農地相続ポータルは、審査手数料が土地一筆当たり14,000円、負担金は田畑で原則20万円(市街化区域や用途地域内などは面積に応じた算定)と案内している。建物、埋設物、汚染がある土地、権利関係に争いのある土地は対象外だ(2026年7月31日確認)。畑で引っかかるのは埋設物と境界で、ビニールハウスの基礎、投棄された廃材、崩れた石積みは申請前に片づける側の費用になる。
条件を確かめる前に、値段のほうを先に聞いた
編集部が相続したのは畑ではなく沖縄の傾斜地だが、順番が悪かった。相続してすぐ、いくらになるのかを外に聞いて回った。売却、寄付、国庫帰属と当たり、どれも実らない。断られた理由は毎回ほぼ同じで、傾斜と接道、造成費が土地の値段を上回ること。聞きに行く前に自分で調べられたことだった。その間も固定資産税の年約7万円は止まらない。畑なら、動かない条件は区域と区分で、どちらも電話1本で分かる。
相続税で自分の目で確かめられるのは、倍率表の畑の欄まで
素人が触ってよい範囲は、国税庁の評価倍率表を開いて畑の欄を見るところまでだ。倍率表には田と畑の欄が別に置かれ、農地の分類、評価方式、固定資産税評価額に乗ずる倍率が略称で書かれている(国税庁・評価倍率表(一般の土地等用)の説明、2026年7月31日確認)。同じ表でも田と畑で分類も倍率も違うことがある。
分類は4種類。純農地と中間農地は倍率方式、市街地周辺農地は市街地農地としての価額の80パーセント、市街地農地は宅地比準方式か倍率方式になる(タックスアンサーNo.4623 農地の評価、2026年7月31日確認)。市街地に近いほど宅地の側に引き寄せられる、という方向だけ掴めば足りる。
そこから先は税理士の仕事だ。自分で管理できるのは時期で、申告と納税は死亡を知った日の翌日から10か月以内に来る。
