実家の査定を受ける前に|相場を自分で調べる手順

実家がいくらになるのかを調べ始めると、一括査定の申し込み手順ばかりが出てきます。
査定額は3か月程度で買い手が付くことを目安に出す売り出し価格の意見で、売れる金額の約束ではありません。頼む前に公表された成約価格で幅を作り、建物の書類をそろえておくと、会社ごとに違う数字を読む物差しが手元に残ります。
この記事の目次
査定額は売り出し価格の意見であって、売れる金額ではない
宅地建物取引業者が出す査定額は、宅地建物取引業法上は価額についての意見です。同法第34条の2第2項は、意見を述べるときはその根拠を明らかにしなければならないと定めています(出典:公益財団法人不動産流通推進センター 既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き・2026年7月30日確認)。意見である以上、会社が違えば数字も違い、根拠は聞けば出てくるものとして制度が組まれています。
同じ手引きは、査定価格を売り出し価格の参考として3か月程度で買い手が付くことを目安に算出するものと説明しています。3か月で反応が無ければ、価格を動かすか売り方を変えるかの判断が来る前提の数字です。
| 数字の名前 | 誰が決めるか | 意味 |
|---|---|---|
| 査定額 | 宅地建物取引業者 | 3か月程度で買い手が付くことを目安にした価額の意見 |
| 売り出し価格 | 売主 | 査定額を参考に売主が決めて公開する価格 |
| 成約価格 | 売主と買主 | 実際に契約が成立した価格。事後にしか分からない |
この三つが混ざると、査定額の高い会社に頼めば高く売れるという読み方になります。高い査定額は売り出し価格を高くする理由にはなっても、買い手が増える理由にはなりません。
似た言葉の鑑定評価は別の制度で、不動産鑑定士だけが不動産鑑定業者の業務として行えます(出典:国土交通省 不動産鑑定評価ポータルサイト・2026年7月30日確認)。報酬が発生し、遺産分割や裁判で第三者に示す評価が要るときに使います。売るために相場を知りたいだけなら出番は限られます。
実家には目的別に四つの値段がある。混ぜると家族の話が止まる
兄弟で金額の話が噛み合わないときは、別々の値を持ち寄っています。
| 使う場面 | 使う値 | 出どころ | 水準と時点 |
|---|---|---|---|
| 売る | 査定額、成約価格 | 宅地建物取引業者、不動産流通機構 | 取引のたびに動く |
| 相続税・贈与税 | 相続税路線価、評価倍率 | 国税庁 | 1月1日時点。地価公示価格等の80%程度が目途 |
| 固定資産税 | 固定資産税評価額 | 市区町村 | 3年ごとの評価替え。宅地は地価公示価格等の7割が目途 |
| 遺産分割 | 時価(相続人の合意) | 当事者 | 合意した時点 |
令和8年分の路線価は2026年7月1日に公開されました(出典:国税庁 令和8年分の路線価等について・2026年7月30日確認)。固定資産税評価額は原則3年ごとに評価替えが行われます(出典:総務省自治税務局資産評価室 固定資産評価のしくみについて(土地評価)・2026年7月30日確認)。
売った場合の税額や特例が使えるかの判断は税理士か税務署に置いてください。税の側の期限と要件は実家を売ったときの税金に分けています。
依頼の前に、成約価格で自分の幅を作る
比べる基準を先に作ります。使うのは2024年4月1日から運用されている国土交通省の不動産情報ライブラリ。価格情報は、取引当事者へのアンケートを基にした不動産取引価格情報と、不動産流通機構の成約価格情報の二種類で、登録も費用も要りません(出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ/出典:国土交通省 不動産情報ライブラリの運用を開始します・2026年7月30日確認)。
- 実家の市区町村と、最寄り駅または地区で絞る
- 種類を宅地(土地と建物)にする。マンションが混ざると水準が跳ねる
- 時期は直近2年ほど。古い事例は当時の水準として別に置く
- 土地面積、建物面積、築年、駅からの距離が近いものを4件以上ひろう
- 総額のままにせず、土地の1平方メートル単価に直す
- いちばん低い事例と高い事例を、そのまま自分の幅として書き留める
一点の数字を作らないところが肝心です。事例のばらつきは誤差ではなく条件の違いで、幅で持っておくと、査定額がその幅のどこに落ちたかで質問すべき内容が決まります。
手元の書類から、土地の水準を二通りで検算する
事例が薄い地域では、公的な評価額から逆に当たる方法が効きます。使うのは相続税路線価と、固定資産税の課税明細に載っている土地の評価額です。
- 路線価は地価公示価格等の80%程度が目途なので、0.8で割ると公示の水準に戻る
- 固定資産税評価額は7割が目途なので、0.7で割るとやはり公示の水準に近づく
- 二つの逆算が近い値なら、土地の水準はおおむね掴めている
- 大きく開くときは、評価替えの時点差か、間口や形状による画地の調整が効いている
路線価図と評価倍率表は国税庁の財産評価基準書で公開されています(出典:国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表・2026年7月30日確認)。路線価が定められていない地域は倍率地域で、固定資産税評価額に倍率を掛けます。固定資産税評価額は3年ごとの評価替えなので、据置年度の数字は最新の地価ではありません。
成約事例の幅と逆算した水準が同じ帯に入れば、根拠が二つある数字になります。ここで出るのは土地だけなので、建物にいくら乗っているかは分けて聞きます。
建物にいくら乗るか。築20年から25年で一律ゼロという慣行は見直されている
古い実家ほど、建物はゼロと言われる前提で身構えます。国土交通省は平成26年3月の指針で、個別の住宅の状態にかかわらず一律に築後20年から25年で建物の市場価値をゼロとする慣行が、中古住宅流通市場の阻害要因になっていると整理しました(出典:国土交通省 中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針の策定について/出典:同 指針本文・2026年7月30日確認)。
改訂された価格査定マニュアルでは、戸建住宅の建物は原価方式、土地は事例比較方式で算出し、建物は基礎や躯体のグレードと維持管理やリフォームの状況を反映します。最後に掛ける流通性比率は1.00を基準に、マイナス15%からプラス10%の範囲で評価されます(出典:公益財団法人不動産流通推進センター 既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き・2026年7月30日確認)。
建物側を動かすのは交渉ではなく資料です。点検や補修の記録、リフォームの請負契約書や見積書、検査済証、耐震に関する証明。これらを出せるかで、同じ築年でも評価の置き場所が変わります。
逆に、最寄り駅からの距離、道路付けと間口、土地の形、周辺で同時に売りに出ている件数は条件として固定されていて、査定の場で議論しても動きません。
机上査定の数字は最低額に近い、と手引きが書いている
机上査定は住所や面積や築年から出すもので、訪問査定は現地を見てから出します。価格査定マニュアルの手引きは、基本情報と基礎躯体のグレードだけを入力した段階でも簡便な査定額は算出できるが、それは最低額に近い査定価格であり、建物グレード以降の詳細条件を考慮していない、と書いています(出典:公益財団法人不動産流通推進センター 既存住宅価格査定マニュアル利用の手引き・2026年7月30日確認)。
人が住まなくなった家は、内部の状態も設備の更新履歴も外から読めません。読めない部分は低いほうに置かれます。机上の数字だけを見て、思ったより安いと結論を出す必要はありません。
遠方に住んでいるなら、鍵の所在、電気と水道が止まっているか、室内に入れる状態か、立ち会えない場合に誰が開けるか。この四つが決まっていれば、訪問査定の日程調整は一度で済みます。
査定の前にそろえる書類。実家では在り処を探すところから始まる
書類は査定額を上げるためではなく、査定を成立させるために要ります。無い項目は低いほうに置かれます。
| 書類 | どこで手に入るか | これで何が決まるか |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局(オンライン請求も可) | 名義、共有者、抵当権が残っているか |
| 固定資産税の課税明細書 | 手元、または市区町村の税務担当 | 地番、地積、評価額 |
| 測量図、境界に関する書類 | 法務局、手元 | 面積の確からしさ、越境の有無 |
| 建築確認済証、検査済証 | 手元、または市区町村の台帳記載事項証明 | 建て替えができる土地かどうか |
| リフォームの契約書、見積書、点検の記録 | 手元 | 建物に乗る評価 |
| 耐震に関する証明 | 手元 | 昭和56年以前に建てられた建物の扱い |
名義には期限があります。相続登記の申請義務化が令和6年4月1日に施行されました(出典:法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し・2026年7月30日確認)。査定は名義が未了でも頼めますが、売る段では登記が前提です。手順の全体は実家を売る手順と相場の調べ方に置いています。
相場だけ知りたい段階でも使える
複数の会社に同じ条件で査定を出させると、金額そのものより、根拠の出し方の差が見えます。売る時期が決まっていなくても、相場を知るための利用で構いません。
無料で査定額を調べる金額が会社ごとに開いたときに聞く四つ
三社に頼めば三つの数字が出ます。見るのは高さではなく根拠の粒度で、根拠を明らかにしなければならないと法が定めている以上、次の質問は出せる範囲です。
- 採用した成約事例を3件、所在と時期と面積と価格で見せてほしい
- この金額のうち、土地がいくらで建物がいくらか
- 流通性比率をいくつにしたか。プラスまたはマイナスにした理由は何か
- 3か月で買い手が付く想定か。付かなかった場合に何をどう変えるか
四つ目まで聞くと金額の性格が分かります。3か月の目安を外して高い数字を置いている場合、売り出しの後に価格改定の相談が来る組み立てです。
売り出したあとに動かなくなったときの手は実家が売れない理由と、値下げ以外に打てる手に置いています。
実家では、査定そのものが立ち上がりにくい型がある
条件によっては数字が出ないか、幅が極端に開きます。比べる事例が作れないか、買い手の範囲が狭いことの表れです。
| 型 | 査定でどう出るか | 先に確かめる先 |
|---|---|---|
| 接道を満たさず建て替えができない | 土地としての値段が大きく下がる。会社によって扱いが割れる | 市区町村の建築指導の窓口 |
| 宅地に農地や山林が混ざる | その部分だけ別の手続きになり、査定から外れる | 市区町村の農業委員会 |
| 共有で意思が揃っていない | 金額は出るが、依頼そのものが進まない | 司法書士、弁護士 |
| 境界が未確定、または越境がある | 面積の前提が置けず、幅が広くなる | 土地家屋調査士 |
| 残置物が多く室内を見られない | 訪問査定でも机上に近い数字になる | 片付けの範囲を先に決める |
査定を頼む前に手元で確定していた、唯一の数字
編集部は沖縄の傾斜地を相続し、売却や寄付や国庫帰属を順に検証しましたが、どれも成立せず、いまも保有しています。比べる事例が無く買い手の範囲も見えないため、数字を出す側にも置き場所がありませんでした。確定していたのは固定資産税の年約7万円だけです。
査定のあとに始まること。依頼するかどうかは、まだ決めなくてよい
査定を受けても、その会社に売却を任せる義務はありません。依頼する段階で結ぶのが媒介契約です。専属専任媒介と専任媒介は依頼先が1社に限られる代わりに、不動産流通機構への登録が義務づけられ、期限は契約締結日の翌日から専属専任媒介5日以内、専任媒介7日以内。報告は1週間に1回以上と2週間に1回以上で、有効期間はいずれも3か月以内です(出典:公益財団法人東日本不動産流通機構 媒介契約制度・2026年7月30日確認)。
査定は相場を知る作業、媒介契約は売り方を決める作業で、同じ日に両方を決める理由はありません。編集部は士業ではないため、税額と特例は税理士か税務署、境界は土地家屋調査士、名義は司法書士、再建築の可否は市区町村の建築指導の窓口です。
