借地の更新料はいくら?払う義務があるかの見方
地主から更新料を請求されて、払う義務があるのかどうかが分からない。この分かれ目は契約書の中にあります。
法律には更新料を義務づける条文がなく、最高裁は慣習だけを理由にした支払義務を否定しています。定めがある場合の目安は借地権価格の5〜10%。ただし平成4年8月1日より前の契約には旧借地法が働きます。
この記事の目次
更新料に支払う義務があるかは、契約書に定めがあるかで決まる
借地借家法(平成3年法律第90号)を2026年8月時点で確認しましたが、更新にあたって借地権者が更新料を支払わなければならないという規定はありません。廃止前の借地法(大正10年法律第49号)にも同じ規定はなく、法律そのものを根拠に支払義務が生じることはない、というのが出発点です。
最高裁昭和51年10月1日判決は、地主の請求があれば当然に更新料の支払義務が生じるという商慣習ないし事実たる慣習が存在するとは認められないと判断しています(判例時報835号63頁。弁護士法人永 総合法律事務所の解説で確認)。
実務上、支払義務があると扱われやすいのは次の形です。
- 契約書に更新料の支払いと、金額または算定方法が具体的に書かれている
- 今回の更新にあたって、金額を含めて地主と合意した
逆に契約書に定めがなく今回の合意もない場合は、支払義務がないというのが多くの弁護士の説明です。ただし過去の更新で払った実績が黙示の合意を裏づけるかどうかは扱いが割れており、義務があると言い切る解説と、過去の支払いだけでは将来の義務は生じないとする解説(内藤寿彦法律事務所)が並存しています。
契約書のどこを見るか。条項の書き方で結論が変わる
- 契約の日付(平成4年8月1日より前か後か)
- 存続期間と、次の満了日
- 建物の種類(堅固建物か、木造などの非堅固建物か)
- 更新料の条項があるか。あるなら、金額か算定方法が書いてあるか
- 増改築の制限、譲渡の際の承諾に関する条項
4番が結論を左右します。東京高裁令和2年7月20日判決は、契約書に「相当の更新料」と書かれていた事案について、この文言では客観的に金額を算出できないとして支払義務を認めませんでした(神楽坂総合法律事務所およびURUHOMEの解説で確認)。金額や算定方法まで書かれていれば、その定めに従うことになります。
相続した直後で何から確かめるか決まっていないなら、借地に建つ実家を相続したら|最初に確かめる3つと4つの出口で順番を整理しています。
平成4年8月1日が分かれ目。実家の借地は旧法のことが多い
借地借家法は平成3年10月4日公布、平成4年(1992年)8月1日施行。附則第2条で建物保護に関する法律・借地法・借家法が廃止されています(衆議院掲載の法律第九十号本文で確認)。
問題は経過措置です。附則第4条は施行前に生じた事項にも新法を適用するとしつつ、附則第6条が、施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関してはなお従前の例によると定めています。更新については旧借地法が働き続けます(金子総合法律事務所の解説でも同じ整理)。
期間の定め方が新旧で違います。
| 項目 | 旧借地法(平成4年7月31日以前の設定) | 借地借家法(平成4年8月1日以降の設定) |
|---|---|---|
| 当初の存続期間 | 定めがなければ堅固建物60年・非堅固建物30年。契約で定めるなら堅固30年以上・非堅固20年以上(借地法2条) | 30年。契約でより長く定めればその期間(3条) |
| 更新後の期間 | 堅固建物30年・非堅固建物20年(借地法5条) | 最初の更新から20年、2回目以降は10年(4条) |
| 建物の朽廃 | 朽廃すれば借地権は消滅しうる | 朽廃による消滅の制度はない |
旧借地法の条番号はみずほ中央法律事務所の掲載する全文で確認しました。昭和や平成初期に始まった実家の借地は、木造なら更新後20年という単位で動いてきた可能性が高くなります。
更新には3つの入口がある。更新料と更新は別の話
借地の更新は、次の3つのどれかで起きます。
- 合意更新:地主と借地権者が話し合って更新する。更新料が出てくるのは主にこの場面
- 更新請求による更新:借地権者が更新を請求すると、建物がある場合に限り、従前と同一条件で更新したものとみなされる(借地借家法5条1項)
- 法定更新:期間満了後も借地権者が土地の使用を継続し、地主が遅滞なく異議を述べないときに更新したものとみなされる(同5条2項)
地主が異議を述べるには正当の事由が必要で、双方が土地の使用を必要とする事情、従前の経過、利用状況、明渡しと引換えの財産上の給付の申出などで判断されます(6条)。旧借地法では条文上はっきりせず、新法で考慮要素が明示されました。
9条は借地権者に不利な特約を無効と定めています。更新料を払わなければ更新しないと言われても、更新の可否と更新料の支払いは条文上つながっていません。
相場は借地権価格の5〜10%。金額を出す順番
金額の目安として業界団体が公表しているものは、次の2つです(いずれも2026年8月時点で確認)。
- 日本地主家主協会:契約に定めがない場合の更新料の目安は借地権価格の5〜10%程度
- 公益社団法人全日本不動産協会:借地権の更新では一般に更地時価の5〜10%程度の金銭の授受が行われている
不動産会社の解説では住宅地で借地権価格の5%前後、更地価格の2〜5%という示され方が多く、地域と用途で水準が動きます。
自分の土地に当てはめる順番はこうなります。
- 国税庁の財産評価基準書で、その土地が面する道路の路線価を見る。路線価は1平方メートルあたりの価額を千円単位で表示している
- 路線価の右隣にあるA〜Gの記号が借地権割合。A:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%(国税庁「路線価図の説明」)
- 自用地としての価額に借地権割合を掛けたものが借地権の価額(国税庁No.4611、令和7年4月1日現在法令等)
- そこに5〜10%を掛けた幅が、話し合いの土俵になる数字
注意点が2つ。借地権割合は相続税や贈与税の評価のための割合で、売買価格を示すものではありません。もう1つ、更地価格と借地権価格のどちらを基準にするかで金額は倍近く変わります。提示額は、どちらの何パーセントなのかを先に確かめます。
払わなかったらどうなるか。解除されるのはどんな場合か
更新料を払わないことが、ただちに契約解除につながるわけではありません。ただし最高裁昭和59年4月20日判決は、更新料の支払いが賃料の補充や契約継続の対価として契約の重要な要素になっている場合、その不払いは解除の原因になり得ると判示しています(イエコンの解説で判決日を確認)。
法的性質については、建物賃貸借の事案ですが最高裁平成23年7月15日判決が、賃料の補充ないし前払、契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有すると説示しています(全日本不動産協会の解説で確認)。借地に直接適用される判断ではありませんが、実務で参照されています。
関係がこじれると、建替えや譲渡について地主の承諾が得にくくなります。ただし逃げ道は用意されていて、増改築や借地条件の変更は借地借家法17条、賃借権の譲渡・転貸は19条で、裁判所が承諾に代わる許可を与えます(旧借地法でも8条ノ2・9条ノ2)。承諾が絶対条件で八方塞がりという理解は正確ではありません。
高いと感じたときに確かめる順番
- 契約書に更新料の条項があるか。あるなら金額または算定方法まで書かれているか
- 前回の更新でいくら払ったか。領収書や覚書が残っているか
- 今回の提示額は、更地価格と借地権価格のどちらの何パーセントか
- 路線価図で路線価と借地権割合を引き、自分でも幅を出してみる
- 地代が周辺相場より低く据え置かれてきたか。安い場合、更新料でバランスを取るという考え方が持ち出される
- やり取りは書面かメールで残す
更新を拒まれたときに残る手段
地主が更新を拒む場合、異議に正当の事由が必要です(借地借家法6条)。双方の土地使用の必要性が中心に見られ、立退料の申出も考慮要素の1つとして扱われます。
更新がないことが確定した場合、借地権者には建物買取請求権があります。借地借家法13条は、存続期間が満了して更新がないとき、借地権者が借地権設定者に建物を時価で買い取るべきことを請求できると定めています。14条は建物を取得した第三者の買取請求で、旧借地法でも4条に同趣旨の規定があります。
誤解されやすい点が2つ。買取請求権は更新がないときの権利で、借地権を地主に買い取らせる権利ではないこと。買い取られるのは建物の時価だということ。築数十年の木造なら建物の評価はほとんど残りません。出口ではあっても、金額の当てにはなりにくい権利です。
更新の年に決めることは、実家じまいでは3つに絞られる
取れる道は3つ。
- 更新して持ち続ける:更新料に加えて地代、建物の固定資産税、火災保険、管理の手間が続く。木造で旧法なら更新後20年という単位になる
- 借地権を売る:地主の承諾が要り、承諾が得られない場合は裁判所の許可(借地借家法19条)という道がある。譲渡承諾料が別途かかる
- 返す:更新がない場合の建物買取請求(13条)か、地主との合意で契約を終了させる。合意解除では建物の解体と更地での返還を求められることが多く、解体費の負担が論点になる
更新料だけを単独で考えると比較の土俵が狭くなります。次の20年で出ていく地代の総額、いま売った場合に残る額、返す場合の解体費を横に並べて初めて、高いか安いかを判断できます。
譲渡や増改築の場面で地主に払う承諾料は借地の承諾料の相場|何を頼むときにいくら払うかに、相続で引き継いだときの承諾の要否は借地権の名義変更|相続で地主の承諾は要るのかにまとめています。
相続で引き継いだ借地権と、更新料の税務上の扱い
借地権は財産的な価値のある権利で、相続税の課税対象になります。評価は、宅地の自用地としての価額に借地権割合を掛けて求めます(国税庁No.4611、令和7年4月1日現在法令等。2026年8月時点で確認)。定期借地権や一時使用目的の借地権は別の評価方法です。
更新料は地代のように毎年落とせるものとは違います。全日本不動産協会の解説によれば、更新料は借地権等の取得費に含まれ、業務の用に供している借地権に限り、更新直前の取得費に「更新料の額÷更新時の借地権の時価」を掛けた金額がその年の必要経費に算入されます。自宅として使っている借地なら、必要経費という話にはなりません。
借地権の評価や相続税の扱いを確認したい
借地権が相続財産としていくらになるか、更新料や承諾料をどう扱うかは、契約の内容と土地の評価で変わります。無料の相談窓口で、確認すべき論点を先に整理しておく方法があります。
無料で相続税の相談をする自分で確認できる場所と、専門家に聞く範囲
この記事の数字と条文は、次の場所で自分でも確認できます(いずれも2026年8月時点)。
- 条文:e-Gov法令検索で借地借家法。存続期間3条、更新後の期間4条、更新請求と法定更新5条、正当事由6条、建物買取請求権13条・14条、増改築の許可17条、譲渡の許可19条。施行日と経過措置は附則1条・2条・4条・6条
- 路線価と借地権割合:国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)。路線価は千円単位、右隣のA〜Gが借地権割合
- 建物の登記:法務局で登記事項証明書。建物の所有者と構造、新築年が分かる
- 建物の評価額:市区町村の固定資産課税台帳(評価証明書)
更新の年に、費用を並べて比べる
更新料、地代、建物の固定資産税、解体費。どれを負担し続けるかで判断が変わります。相続にからむ部分は無料相談で洗い出しておくと、地主との交渉に入る前に材料がそろいます。
無料で相続税の相談をする