空き家の庭木が伸びて困るときの対処と費用

空き家の庭木が伸びて困っているなら、切るかどうかより先に、木がどこに出ているかを確定させます。隣地への越境は2023年4月の民法改正で、条件を満たせば隣が自分で切れるようになり、費用は原則として木の所有者に請求されます。
伐採は1本3,000円から3万円台が目安で、抜根と処分は別勘定。遠方でも立会いなしで手配できます。
この記事の目次
まず決めるのは「木がどこに出ているか」
同じ高さ5メートルの木でも、敷地の中央に立っているのと、隣家の屋根に枝が乗っているのとでは、動くべき速さが別物です。現地に行けないなら、四方から撮った写真だけで判定できます。
| 木が出ている場所 | 放置すると起きること | 動く速さの目安 |
|---|---|---|
| 隣地に枝が越境している | 催告のうえ隣地側が自分で枝を切り、費用を請求してくる場面がある(民法233条) | 催告が届いたら2週間程度が目安 |
| 道路・歩道・電線に張り出している | 通行と視認の支障。市区町村は原則として代わりに切らない。緊急時は道路管理者が除去し、費用を請求することがある | 気づいた時点で手配 |
| 敷地の中で伸びているだけ | すぐに他人の損害にはならないが、行政が管理不全空家等として指導・勧告する材料になりうる | 次の帰省、次の管理訪問まで |
越境した枝は、条件がそろえば隣が切れる(2023年4月の民法改正)
2023年4月1日施行の民法改正で、越境した枝の扱いが変わりました。改正後も原則は木の所有者に切らせる建て付けですが、次のいずれかに当たる場合は越境された側が自ら切り取れます(民法233条3項1号から3号)。
- 木の所有者に越境した枝を切除するよう催告したのに、相当の期間内に切除しないとき
- 木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
- 急迫の事情があるとき
「相当の期間」は2週間程度とされている
神戸市は相当の期間を基本的には2週間程度と考えられるとしており、弁護士事務所の解説も同様です(桑原法律事務所/2026年7月31日確認)。隣地から書面で切除を求められた時点で、持ち時間は2週間前後です。
費用は木の所有者に請求されうる
改正民法に切除費用の負担を定めた条文は置かれませんでした。それでも自治体や業界団体は、枝の越境が土地所有権を侵害し、隣地所有者が切ることで木の所有者が切除義務を免れることを理由に、基本的には木の所有者に請求できると整理しています(民法703条・709条。福生市、公益社団法人全日本不動産協会/2026年7月31日確認)。
根・共有・隣地への立入り
- 根が境界線を越えているときは、催告なしで越境された側が切り取れます(民法233条4項)
- 木が複数人の共有でも、切除を求められた共有者は単独で枝を切り取れます(同条2項)
- 枝を切り取るのに必要な範囲で、隣地を使用できます(民法209条)
道路への張り出しと、倒れて壊したときの責任
道路や歩道に枝が張り出していても、市区町村が代わりに切ることは基本的にありません。鳥取市は市でせん定や伐採はできないと明記し、静岡市も、原則として市では剪定できず、緊急性がある場合に道路管理者が除去したうえで必要に応じて費用を請求することがあると案内しています(いずれも2026年7月31日確認)。
倒木・落枝の賠償は所有者に向かいやすい
民法717条1項は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害が生じたとき、占有者が賠償責任を負い、占有者が必要な注意をしたときは所有者が賠償すると定めています。同条2項は竹木の栽植または支持に瑕疵がある場合にこれを準用しており、庭木にも及びます(四万十町「道路上に張り出している樹木所有者・管理者の皆さまへ」に条文掲載/2026年7月31日確認)。
空き家は占有者がいないため、責任の議論は所有者に向かいやすくなります。
行政から見ると、伸びた庭木は「管理不全」のサイン
2023年12月13日、空家等対策の推進に関する特別措置法の改正法が施行され、管理不全空家等が新設されました。市区町村長は、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある空家等を管理不全空家等と認定し、必要な措置をとるよう指導・勧告できます(空家法第13条)。勧告を受けた土地は住宅用地特例が解除され、固定資産税・都市計画税の軽減措置が受けられなくなります(地方税法第349条の3の2第1項。国土交通省、越谷市/いずれも2026年7月31日確認)。
庭木の繁茂は、道路からの写真1枚で記録される管理不全のサインです。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| 行政の手段 | 指導・勧告 | 助言・指導、勧告、命令、行政代執行 |
| 税の扱い | 勧告で住宅用地特例が解除 | 勧告で住宅用地特例が解除 |
| 罰則・強制 | 命令・代執行の規定はない | 命令違反は50万円以下の過料。代執行の費用は所有者負担 |
50万円以下の過料は特定空家等の側の規定で、管理不全空家等の段階で効くのは税額のほうです。順番の整理は空き家の固定資産税が6倍になる条件と回避の順番にあります。
剪定で回し続けるか、伐採で終わらせるか
剪定は枝葉を整えて木を残す作業、伐採は地際で切って木をなくす作業です。根を掘り取る抜根は別作業で、料金も別に立ちます。
剪定で回し続ける場合に発生し続けるもの
- 年1回から2回の反復作業と、そのたびの手配
- 切った枝葉の処分
- 間隔が空くほど1回あたりの作業量が増え、料金も上がる
伐採に倒す判断がしやすい条件
- 年に1度も現地に行けず、代わりに見てくれる人も近くにいない
- すでに越境や道路への張り出しが起きている
- 5年10年の単位で使う予定がなく、いずれ売却か解体を考えている
建物ごと処分するなら解体工事に伐採・抜根を含められることがあり、搬出がまとまる分だけ安くなる場合がありますが、更地にすると住宅用地特例が外れます。費用の幅は庭木の伐採費用の相場|高さと本数、抜根の有無で変わるで確認できます。
庭木の伐採を解体とまとめるといくらか、先に比べる
建物ごと処分する選択肢が視野に入っているなら、庭木の伐採・抜根を含めた解体費用の幅を先に把握しておくと、木だけ切る場合との比較ができます。
無料で解体費用を比べる費用の目安と、見積書で突き合わせる項目
以下は事業者マッチングサービスの公表集計値です(くらしのマーケットマガジン/2026年5月時点の集計、2026年7月31日確認)。
| 木の高さ | 伐採1本あたりの目安 |
|---|---|
| 3メートル未満(低木) | 3,000〜9,000円 |
| 3〜5メートル(2階建て住宅の2階の窓ほど) | 8,000〜20,000円 |
| 5メートル以上 | 15,000〜30,000円 |
同じ集計では、3〜5メートルの木で伐採と抜根と処分をまとめた総額の目安が19,000円から17万円、抜根をせず伐採と処分だけなら6,000円から11万円。7メートル超は個別見積りになります。
本体価格に含まれないことが多い項目
- 抜根(切り株の掘り取り)。幹回りで単価が変わる
- 枝葉と幹の処分費。樹種と密度によっては伐採そのものより高くつく
- 高所作業車やクレーンの手配費
- 搬出距離が長い、重機が入らないなどの人力加算
- 駐車場代、遠方の場合の出張費
見積書で必ず突き合わせる5点
- 本数と高さが1本ずつ書かれているか。一式だけでは他社と比べられない
- 処分費が含まれているか、別か
- 抜根が含まれているか、切り株を残す前提か
- 近隣の車や塀を傷つけた場合に備えた保険に加入しているか
- 立会いなしで作業できるか、鍵の受け渡しはどうするか
同じサービスの剪定の目安は、低木(3メートル未満)2,500〜4,000円、中木(3〜5メートル未満)5,000〜9,000円、高木(5〜7メートル未満)1.3万〜2万円(2026年7月31日確認)。
高さと本数を伝えて、作業料金を並べて比べる
庭木の伐採と剪定は、同じ条件でも事業者ごとに料金体系が違います。作業内容と料金が事前に表示されるサービスで、まず自分の庭の幅を把握するところから始められます。
作業の料金を比べる遠方から手配する手順
- 現況を写真で押さえる。敷地の四方から1枚ずつ、越境した枝は可能なら隣地側からも。根元にメジャーを置くと太さが伝わります
- 数える。本数とおおよその高さ、分かれば樹種。落葉樹か常緑樹かだけでも見積りの精度が上がります
- 複数社に同じ写真と同じ条件を送る
- 立会いなしで受けられるか確認する
- 敷地に入る手段を決める。門扉の鍵、駐車スペース、水道と電源。止まっていれば事業者側の手配が要ります
- 近隣への挨拶を誰がやるか決める
- 作業前後の写真をもらう。指導や勧告が来ている場合、改善の記録として使えます
- 切った後の処理を決める
事業者の作業で出た切り枝や刈り草は事業系の一般廃棄物として扱われ、ごみステーションには出せないと案内している団体があります(柏市シルバー人材センター/2026年7月31日確認)。定期的に見てもらう形にするなら空き家の管理はどこまで必要?頻度と代行の相場で頻度と料金を確認できます。
依頼先の比べ方(料金体系がそもそも違う)
| 依頼先 | 料金体系 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 造園業者・植木屋 | 1本単価または日当 | 庭全体を整える、木は残す | 高木の特殊伐採は別扱いのことがある |
| 伐採専門業者 | 1本単価に抜根・処分を加算 | 高木を根元から処理する | 7メートル超は個別見積りになりやすい |
| シルバー人材センター | 時間単価または日額 | 低木の剪定、除草 | 危険作業を受けない場合がある。地域により受付停止も |
| 空き家管理代行 | 月額とオプション | 庭木以外の見回りもまとめたい | 大きな伐採は外部手配になることが多い |
| 便利屋・マッチング型 | 作業ごとの定額 | 1回で終わらせたい | 保険加入と処分費の扱いを確認 |
シルバー人材センターは安いが、伐採は前提外のことがある
市原市シルバー人材センターは植木の剪定を日額16,000円からとしたうえで、大木の伐採や屋根の修繕等の危険な作業は承りかねると明記しています(令和8年4月1日からの料金)。福岡市シルバー人材センターは機械による草刈りを1時間あたり約1,920円、手刈り除草を約1,524円とし、剪定は時間単価と時間数の10パーセント、草刈りは15パーセントを諸経費として請求すると案内。堺市では区によって植木剪定の新規受付を停止しています(いずれも2026年7月31日確認)。
補助金は出るのか(多くの制度は宅地の庭木を外している)
危険木の伐採に補助金が出るという情報はありますが、要綱を読むと空き家の庭木は対象外の制度が目立ちます(いずれも2026年7月31日確認)。
| 自治体 | 対象 | 補助額 |
|---|---|---|
| 三田市(兵庫県) | 森林法第2条1項に規定する森林内にある、胸高直径20センチ以上かつ樹高5メートル以上で、倒木により建造物または公道に被害を与えるおそれのある樹木 | 対象経費の2分の1以内、上限20万円 |
| 岡山市 | 里山の危険木。危険木の所有者と、倒木で被害を受けるおそれのある住居の所有者または管理者が同一もしくは生計同一の場合は対象外 | 対象経費の2分の1以内、上限10万円 |
| 京都市 | 道路や民家等に隣接する森林の危険木を自治会等が伐採する場合。被害を受けるおそれのある者が所有者本人だけなら対象外 | 経費の一部 |
共通するのは、対象が森林や里山であること、自分の木が自分の家にだけ倒れるケースを外していることです。
多くの補助は伐採の前に申請し、交付決定を待ってから着手することが条件です。先に切ると対象外になります。同種の制度があるかは、林政・環境・空き家の担当窓口に直接確認する範囲です。
