農地転用の費用はいくら?坪数別の総額と誰が払うか

農地転用の費用を調べると、行政書士報酬の相場ばかりが出てくる。そこは総額の一部にすぎない。
公表されている統計と単価で積み上げると、100坪で約26〜125万円、300坪で約107〜454万円。金額を動かすのは報酬ではなく工事費と土地改良区の決済金で、報酬は全体の1割前後にとどまる(2026年7月30日時点の公表値で算定)。
この記事の目次
農地転用の費用は5か所から出ていく
宇都宮市も岐阜市も、案内に手数料の項目を置いていない(宇都宮市・農地の転用/岐阜市・農地を転用する場合、いずれも2026年7月30日確認)。請求が来るのは次の5か所だ。
| 出ていく先 | 金額の目安 | かからない場合 |
|---|---|---|
| 添付書類の取得 | 数千円 | なし |
| 専門家報酬 | 数万円から数十万円 | 自分で申請する場合 |
| 土地改良区の決済金と意見書 | 1平方メートルあたり100円台から300円台 | 受益地でない場合 |
| 造成・整地の工事費 | 数十万円から数百万円 | 形を変えない場合も整地は出ることが多い |
| 登記(地目変更、必要なら分筆) | 数万円から数十万円 | 自分で地目変更を申請すれば実費のみ |
幅が大きいのは金額を決めるのが土地の側だからだ。届出か許可か、農用地区域か、土地改良区の受益地か、道路より低いか。この4つで総額はほぼ決まる(区分は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件)。確認は農業委員会の窓口で無料で、確かめる前に図面や測量を頼むと許可が下りない土地に数十万円を払うことになる。
専門家報酬は、公的な統計で見ると分布がかなり広い
日本行政書士会連合会の報酬額統計調査・令和7年度版(令和8年1月実施)から農地と土地の手続きを並べる。消費税を含み立替金は含まない。
| 手続き | 件数 | 最多回答額 | 平均額 | 最小/最大 |
|---|---|---|---|---|
| 農地法第4条 許可申請 | 273件 | 80,000円 | 96,893円 | 8,800円/800,000円 |
| 農地法第5条 許可申請 | 501件 | 100,000円 | 120,186円 | 5,000円/1,618,720円 |
| 農地法第4条 届出(市街化区域) | 170件 | 50,000円 | 50,728円 | 3,000円/500,000円 |
| 農地法第5条 届出(市街化区域) | 245件 | 50,000円 | 54,226円 | 3,000円/500,000円 |
| 農用地除外申出 | 239件 | 100,000円 | 135,353円 | 7,000円/1,200,000円 |
| 開発行為許可申請(都市計画法第29条) | 118件 | 300,000円 | 1,205,768円 | 66,000円/59,647,500円 |
(日本行政書士会連合会・報酬額の統計、2026年7月30日確認)
ボリュームゾーンは平均より下だ。4条許可は4万円以上10万円未満が273件中162件、5条許可は5万円以上15万円未満が501件中357件。開発行為許可の平均が120万円台なのは最大5,964万円台の案件を含むためで、個人の宅地転用なら30万円が近い(農地転用は行政書士に頼むべき?報酬相場と依頼の判断)。
書類の取得実費は2026年に改定されている
登記手数料は令和7年4月1日に改定された。
| 証明書 | 書面請求 | オンライン・送付 | オンライン・窓口 |
|---|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 600円 | 520円 | 490円 |
| 地図等情報(公図・地積測量図) | 500円 | 470円 | 440円 |
| 印鑑証明書 | 500円 | 450円 | 420円 |
(法務省・登記手数料について、令和7年4月1日からの額)
確認だけなら登記情報提供サービスが安い。全部の情報330円、所有者事項140円、地図および図面360円(令和8年4月1日からの料金、法務省・登記情報提供サービス利用料金)。必要な部数は自治体が示している(仙台市・農地法第5条の許可申請書)。合計しても1万円を超えることは多くない。
土地改良区の決済金は、自治体ではなく改良区が決める
転用する農地が土地改良区の受益地だと、地区除外にあたって決済金を払う。支払いを済ませて意見書をもらわないと農業委員会が受け付けない。
| 土地改良区 | 決済金の単価 | 付随する手数料 |
|---|---|---|
| 日野川流域(滋賀県) | 令和6年度・田は1平方メートルあたり126.67円、上流三市町域の畑は67.76円 | 記載なし |
| 寺谷用水(静岡県磐田市) | 田は1平方メートルあたり320円、畑かん地区の畑は田の3分の1 | 事務手数料1,000円/1件 |
| 元荒川上流 | 地区除外時に負担(単価は要問い合わせ) | 意見書1件あたり3,000円 |
(日野川流域/寺谷用水/元荒川上流の各土地改良区、2026年7月30日確認)
面積をかけると100坪(約330平方メートル)で約4.2万円から10.6万円、300坪(約990平方メートル)で約12.5万円から31.7万円。公共用地として売却または寄付する場合も決済金は要る(吉野ヶ里町・転用決済金)。用地買収での転用は事業者と納付を話し合う(関川水系土地改良区・決済金)。寺谷用水土地改良区の賦課金は10アールあたり年3,300円で、届出がないまま放置すると転用後も課され続ける。
造成費は、国税庁が毎年公表している単価で桁が掴める
市街地農地の相続税評価は宅地価格から造成費を引く宅地比準方式で(国税庁・No.4623 農地の評価)、その単価が都道府県別に毎年公表される。東京都の令和7年分は次のとおり。
| 工事費目 | 造成区分 | 金額 |
|---|---|---|
| 整地費 | 整地を要する面積1平方メートル当たり | 800円 |
| 伐採・抜根費 | 伐採・抜根を要する面積1平方メートル当たり | 1,100円 |
| 地盤改良費 | 地盤改良を要する面積1平方メートル当たり | 2,100円 |
| 土盛費 | 土砂を搬入する土盛り体積1立方メートル当たり | 7,800円 |
| 土止費 | 擁壁の面積1平方メートル当たり | 83,600円 |
| 工事の内容 | 100坪(約330平方メートル) | 300坪(約990平方メートル) |
|---|---|---|
| 整地だけ | 約26万円 | 約79万円 |
| 整地+伐採・抜根 | 約62万円 | 約188万円 |
| 整地+30センチの土盛り | 約104万円 | 約311万円 |
| 擁壁20平方メートル分の上乗せ | 約167万円 | 約167万円 |
これは相続税評価の単価で見積書ではない。傾斜地は別表で、傾斜度3度超5度以下が1平方メートルあたり22,900円、25度超30度以下が73,300円。工事費の桁は土地の形で決まる(田んぼの埋め立て費用の相場と、地盤で失敗しない順番)。
100坪と300坪で、総額を積み上げてみる
ケース1:市街化区域の田100坪を、自分の名義のまま自宅の敷地にする
農地法第4条の届出。開発許可は不要な面積とする。
| 費目 | 安いほうの想定 | 高いほうの想定 |
|---|---|---|
| 添付書類の取得 | 約2,000円 | 約2,000円 |
| 行政書士に届出を頼む | 0円(自分で提出) | 約5万円 |
| 土地改良区の決済金と意見書 | 0円(受益地でない) | 約11万円 |
| 造成工事 | 約26万円(整地のみ) | 約104万円(整地+土盛り) |
| 地目変更登記 | 実費のみ(自分で申請) | 約5万円(土地家屋調査士) |
| 合計 | 約26万円 | 約125万円 |
ケース2:市街化調整区域の田300坪を売って、買主が住宅を建てる
農地法第5条の許可。第2種農地で許可が下りる前提。
| 費目 | 安いほうの想定 | 高いほうの想定 |
|---|---|---|
| 添付書類の取得 | 約5,000円 | 約5,000円 |
| 行政書士に許可申請を頼む | 約10万円 | 約12万円 |
| 農用地区域からの除外の申出 | 0円(白地) | 約13.5万円 |
| 土地改良区の決済金 | 約12.5万円 | 約31.7万円 |
| 測量・分筆登記 | 0円(一筆全部を売る) | 約42万円 |
| 開発許可(手数料と報酬) | 0円(面積要件未満) | 約39万円 |
| 造成工事 | 約79万円(整地のみ) | 約311万円(整地+土盛り) |
| 地目変更登記 | 約5万円 | 約5万円 |
| 合計 | 約107万円 | 約454万円 |
売主と買主のどちらが払うのか
農地法は費用の負担者を決めていない。第4条は転用する人が農業委員会に提出し、第5条は譲り渡す人と譲り受けて転用する人が連署して提出する(長野県・農地等の転用、2026年5月28日更新)。
| 費目 | 申請者・義務者 | 負担が寄りやすい側と理由 |
|---|---|---|
| 第5条許可申請の報酬 | 譲渡人と譲受人の連署 | 転用して使う側。許可が下りないと事業が動かない |
| 土地改良区の決済金 | 組合員(所有者) | 請求先は所有者。買収案件では事業者と協議 |
| 測量・分筆 | 所有者 | 一部だけ売る場合に必要なので売る側 |
| 造成・開発許可 | 転用事業者 | 建てる側。設計と工事が一体になる |
| 地目変更登記 | 転用後の所有者 | 転用後1か月以内の申請義務がある |
| 相続登記・名義の整理 | 相続人 | 登記の名義が申請書と一致しないと止まる |
転用後1か月以内に地目変更登記が必要で(不動産登記法第37条第1項)、申請しなければ10万円以下の過料に処せられる場合がある(宇城市・地目変更登記の案内)。
測量・分筆・地目変更登記の金額も統計がある
日本土地家屋調査士会連合会が3年に1度行うアンケートの令和4年度版、税抜きの全国平均。
| 業務 | 平均報酬額 | 中央値 | 調査の前提 |
|---|---|---|---|
| 土地地目変更登記 | 46,589円 | 45,000円 | 公簿地積200平方メートルの雑種地を宅地にする1筆 |
| 土地分筆登記 | 422,909円 | 403,765円 | 264平方メートルを2筆に等分、隣接5筆の調査と境界標設置を含む |
| 土地地積更正登記 | 390,316円 | 372,584円 | 更正後180平方メートル、隣接6筆の調査と筆界確認 |
| 土地合筆登記 | 50,640円 | 50,000円 | 宅地2筆を1筆にする |
(土地家屋調査士報酬ガイド/日調連・業務報酬統計資料、2026年7月30日確認)
分筆が入るかで10倍近く変わる。一部だけ転用して残りを農地で残すなら、この40万円前後が乗る。
地目変更登記に登録免許税はかからない
地目変更の登記申請に登録免許税はかからない(熊本地方法務局・非農地通知書の案内)。畑から宅地なら農地法の許可書を添付する(法務局・地目変更登記の記載例)。自分で申請すれば数万円が浮く。
開発許可が乗ると、桁がひとつ変わる
一定の規模を超える造成は、農地法の許可とは別に都市計画法の開発許可が要る。
- 静岡市は市街化区域内1,000平方メートル以上(静岡市・開発行為の許可)
- 横浜市は市街化区域500平方メートル以上。市街化調整区域は原則、開発許可がなければ建築できない(横浜市・開発許可制度の概要)
- 千葉県は条例で300平方メートル以上1,000平方メートル未満に引き下げ可(千葉県・開発行為の解説)
いずれも2026年7月30日確認。300坪は約990平方メートルで、1,000平方メートル基準ならぎりぎり外れ、500平方メートル基準なら中に入る。
手数料は条例で定額
平塚市手数料条例では、開発区域0.1ヘクタール未満で自己の居住用8,600円、自己業務用13,000円、自己用外86,000円。0.1以上0.3ヘクタール未満では22,000円、30,000円、130,000円(平塚市・手数料一覧)。
許可が出た時点で動く税金と、費用を下げる順番
転用の許可や届出が済んだ農地は宅地等介在農地として宅地並みに評価され、特例率が1分の1になるため税額が大幅に上がる(厚木市・農地の固定資産税の評価)。許可を先に取っておこうという発想は、着工や売却が遅れると裏目に出る(計算例は農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件)。
売る側は譲渡費用に何が入るかで手取りが変わる(国税庁・No.3255 譲渡費用となるもの、令和7年4月1日現在の法令等)。決済金や造成費の扱いは契約次第なので、申告の前に税理士に当ててほしい。
順番を変えるだけで下がる費用
- 区分の確認を先にする。窓口で聞くだけで費用はかからない
- 土地改良区に受益地かと単価を聞く。意見書の交付日数も同時に聞く
- 届出で済む区域かを確かめる。統計では届出の報酬が許可申請の半額程度だった
- 転用する面積を絞る。造成費も決済金も面積比例。ただし一部だけなら約40万円の分筆が乗る
- 地目変更登記は自分で申請する。登録免許税がかからず測量も要らない
- 見積もりは工事から取る。総額の7割前後が工事費だ
