農振除外とは?6要件と費用、農地転用との違いを解説

農用地区域だと言われて、転用の話がそこで止まっている。
結論から書く。農振除外は許可ではなく市町村の計画変更で、申出の締切は年2〜4回しかなく、決定までは6か月から1年かかる。行政書士報酬は239件の統計で最頻値10万円、10万円台が最も多い(2026年7月30日時点)。
この記事の目次
農振除外は「青地を白地に戻す」手続き。許可ではなく計画の変更
農振除外とは、市町村が定めた農業振興地域整備計画のうち農用地利用計画を変更して、その土地を農用地区域から外すことをいう。農用地区域の農地は通称で青地と呼ばれ、区域から外れると白地になる。
先に押さえるのは、青地のままでは農地転用の申請そのものができない点だ。旭市は農用地区域内の農地は除外しない限り転用申請ができないと明記している(2026年7月30日確認)。不許可になるのではなく、その手前で受け付けてもらえない。
農用地区域に入るのは、10ヘクタール以上の集団的な農用地、土地改良事業などの施行区域内の土地、用排水路や農道の用地などだ(農林水産省・農業振興地域制度の概要、2026年7月30日確認)。区域内では宅地の造成や建物の新築に都道府県知事等の許可が要る(農振法第15条の2第1項)。
同じ農業振興地域内でも農用地区域に入っていない農地は白地で、除外の手続きは要らない。青地か白地かは地番ごとに管理されている。上尾市は土地利用計画図を公開しつつ、随時更新ではないので事前相談の前に地番を特定して確認するよう求めている。
農地転用との違いは、直すものが「区域」か「使い方」か
| 農振除外 | 農地転用 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 農業振興地域の整備に関する法律第13条第2項 | 農地法第4条・第5条 |
| 性質 | 市町村の計画変更(申出) | 許可または届出(申請) |
| 決めるのは | 市町村。都道府県知事の同意が必要 | 都道府県知事(指定市町村では市町村長) |
| 窓口 | 市町村の農政・農業振興担当課が多い | 農地の所在地の農業委員会 |
| 白地の農地 | 不要 | 必要 |
上尾市は、受け付けた複数の申出が1つの案件となって進むと説明している。あなたの補正が遅れると他の申出者の手続きも止まる。転用許可そのものの流れは農地転用とは?費用と期間、許可が下りる条件で整理した。
6要件は農振法第13条第2項。2号に地域計画が入っている
除外が認められるのは、農振法第13条第2項の第1号から第6号をすべて満たす場合に限られる。
| 条文が言っていること | 窓口が確認する中身 | |
|---|---|---|
| 1号 | 農用地等以外の用途に供することが必要かつ適当で、区域外の土地で代えることが困難 | 面積が必要最小限か。緊急性があるか。区域外の土地を選べない理由と、自己所有地の全部を検討したか |
| 2号 | 農用地区域内における地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがない | 市町村が公告した地域計画と、その目標地図に載っている位置か |
| 3号 | 農用地の集団化、農作業の効率化その他の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがない | 農地を分断しないか。連担性や、日照や雨水の放流で農業に影響が出ないか |
| 4号 | 効率的かつ安定的な農業経営を営む者への農用地の利用集積に支障を及ぼすおそれがない | 認定農業者などの担い手が集積している農地にかかっていないか |
| 5号 | 農用地区域内の保全または利用上必要な施設の機能に支障を及ぼすおそれがない | ため池、防風林、かんがい排水施設、農道の機能に支障がないか |
| 6号 | 土地改良事業などの施行区域内の土地は、政令で定める基準に適合していること | 事業が完了した年度の翌年度から起算して8年が経過しているか |
条文はe-Gov法令検索・農業振興地域の整備に関する法律で2026年7月30日に確認した。右列は真岡市が公開している農振除外の6要件についてのチェック項目から取っている。
実務で最も落ちるのは1号だ。上尾市は、売買などで取得すれば目的を達成できる場合は受け付けられないとし、申出者の金銭的な理由で計画変更はできないと明記している。青地が安いから選んだという理由は、そのまま不受理の理由になる。
6要件を満たしても、他法令の見込みがなければ受け付けられない
6要件は法律側の関門で、その手前に自治体側の関門がある。真岡市は申出前の確認項目として、農地転用と開発行為の許可見込み、土地基盤整備事業の完了時期、工場立地法や墓地条例などの許可見込みを並べ、誰といつ協議したかを変更理由書に書くよう求めている。
受け付けられない申出の型は、自治体をまたいでほぼ共通している。上尾市と安中市の公開例を並べる(2026年7月30日確認)。
- 農地法、都市計画法、建築基準法などの許可等の見込みがない
- 転用許可の見込みがない第1種農用地の申出(土地改良区の同意がある場合などは例外)
- 農用地区域に囲まれている農地
- 農地法第3条で取得した後、農地として利用した期間が短い
- 目的に使える農振農用地以外の土地を所有している、または取得できる
- 必要性が客観的に認められない、除外面積が必要最小限と認められない
- 申出者や申出地に他法令を含めた違反がある
- 過去に否認され、否認事由の改善が認められないまま再度出された
福島市は、宅地にして転売したい、計画はないが指定を外してほしいといった理由では除外できないと書いている。将来売るために先に白地にしておく、という順番は制度上成立しない。
8年要件は補助金の返還義務期間。地区ごとに受付が止まる
6号の8年は、こちらの事情では動かない。理由は補助金にある。秩父市は、8年は転用された場合の補助金返還義務期間なので原則として除外申出を受け付けない期間になると説明し、対象地区と再開の時期を公表している(2026年7月30日確認)。
これから工事が入る地区では、これから8年が塞がる。さくら市は堀用水で2023年度から2029年度の改修工事を予定しており、受益地では完了年度の翌年度から8年間は除外できなくなると告知している。
2025年以降、地域計画の変更が先に入った自治体がある
2号要件の地域計画は、農業経営基盤強化促進法に基づいて市町村が定めるもので、区域と担い手を目標地図に落とし込んだ計画だ(農林水産省・地域計画、2026年7月30日確認)。
効くのは、この計画が出そろったあとの手順だ。さくら市は2025年3月31日に地域計画を公告し、それ以降の農振除外には事前に地域計画の変更手続きが必要になると案内している。自治体によっては段が3つになる。
- 地域計画から外す手続き(市町村が地域計画を公告済みの場合)
- 農振除外の申出(農用地区域から外す)
- 農地転用の許可申請(白地になってから)
期間。締切は年2〜4回、決定までは6か月から1年
農振除外に随時受付はほとんどない。締切が決まっていて、1日遅れると次の回まで待つことになる(各自治体の公表資料、2026年7月30日確認)。
| 自治体 | 受付 | 決定までの期間 |
|---|---|---|
| 長野市 | 年3回(1月・5月・9月の各末日締切) | 締切から6〜7か月程度 |
| 所沢市 | 年3回(1月・5月・9月の各末日締切)。事前相談は前月末まで | 公表なし |
| 豊田市 | 年4回(2月・5月・8月・11月の月初3日間) | 受付から約6か月 |
| 上尾市 | 年2回(9月1〜30日・3月1〜31日) | 公表なし |
| 秩父市 | 年2回(2026年度は8月と2027年2〜3月) | 受付回により約7か月 |
| 安中市 | 公表なし | 申出から容認まで概ね1年 |
| 南城市 | 公表なし | 早くて6か月、状況によっては1年程度 |
期間には市町村が短縮できない部分が含まれる。関係権利者の意向を反映させるため、約30日間の縦覧と15日間の異議申出の期間が設けられ、そこに都道府県知事との協議と同意が加わる。
事前相談の位置づけも違う。栃木市は3号要件の立地的な判断のみを行うとしており、見込みありと言われても結論ではない。所沢市は前月末までに事前相談を済ませるよう求めている。締切の1か月前に相談が終わっていない回には、事実上出せない。
費用。統計では最頻値10万円、10万円台が最も多い
費用の相場は、行政書士の報酬額統計で実数が取れる。日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査(2026年1月実施)には農用地除外申出の項目があり、239件の回答が載っている。金額は消費税を含み、立替金は含まない(日本行政書士会連合会・報酬額の統計、2026年7月30日確認)。
| 業務 | 回答件数 | 最頻値 | 平均 | 最小値 | 最大値 |
|---|---|---|---|---|---|
| 農用地除外申出(農振除外) | 239件 | 10万円 | 135,353円 | 7,000円 | 120万円 |
| 用途区分変更申出(軽微変更) | 67件 | 6万円 | 97,230円 | 11,000円 | 120万円 |
| 農地法第4条許可申請 | 273件 | 8万円 | 96,893円 | 8,800円 | 80万円 |
| 農地法第5条許可申請 | 501件 | 10万円 | 120,186円 | 5,000円 | 1,618,720円 |
分布は10万円以上20万円未満が82件で34.3パーセントと最も多く、20万円以上は52件で2割強にとどまる。20万円から40万円という相場観をよく見かけるが、統計の山はもう少し手前にある。
見落としやすいのは、青地だと報酬が2本かかることだ。除外の申出と転用許可申請は別の手続きで、同じ事務所でも別に見積もられる。最頻値10万円どうしを足して合計20万円前後からが目安で、測量や証明書の実費は別になる。転用側の総額は農地転用の費用と、誰が払うかにまとめた。
除外に費用をかける前に、その土地で何が成り立つか見ておく
転用したあとの使い道が決まっていないなら、活用の型と収支の試算を先に並べたほうが判断が早い。複数社のプランを無料で取り寄せられる。
無料で活用プランを取り寄せる除外されても転用許可が下りるとは限らない
農振除外は白地に戻すところまでで、転用の可否は次の審査で決まる。第1種農地に当たれば原則不許可のままだ。安中市が受け付けない例の1番目に転用許可の見込みのない第1種農用地の申出を挙げているのは、この二段構造があるからになる。
市街化調整区域が絡むと都市計画法側の関門も重なる。可否の見分け方は市街化調整区域の農地は転用できる?可否の見分け方で整理した。
除外された後、1年以内に転用しないと青地に戻る
除外は取りっぱなしにできない。1号要件に緊急性が含まれているためで、栃木県の同意基準では緊急性を概ね1年以内に農地以外の用途に供する必要性があることと解釈していると栃木市が説明している。
運用も1年で切られている。高崎市は、除外後1年以内に転用しない土地は必要性が低いと判断し農用地区域へ編入するとしている。所沢市は2015年5月の申出から、1年以内に転用されなければ編入されても異議はないという書面を求め、栃木市も2018年度以降は誓約書を取っている。
やむを得ない事情の受け皿はある。安中市は農用地区域編入猶予願という様式を用意している。出せば認められるものではないので、遅れが見えた時点で窓口に相談する形になる。除外が決まってから資金を組み始めると、この1年に間に合わない。
細かい疑問への答え
農業用施設を建てたい場合も除外が必要か
用途区分の変更(軽微変更)で済む場合がある。畜舎、温室、農機具収納庫などが対象で、旭市は申請面積が1ヘクタール未満なら簡易な手続きが使えるとしている。農業を続ける施設か、農業以外に使うのかで分かれる。
除外に進まずに済む出口はあるか
目的が売ることや持ち出しを止めることなら、青地のままでも動く道がある。農地のまま売る、貸す、農地中間管理機構に相談するといった選択に除外は要らない。住宅や資材置場に変える計画でないなら、半年から1年と2本分の報酬をかける前に比べておきたい。相続や税の判定は税理士や司法書士の領域になる。
待つ時間の重さは、税が動いている土地ほど効いてくる
この土地の固定資産税は年に約7万円。売却、寄付、国庫帰属と出口を順に当たって、どれも成立せず今も保有している。締切が年2回から4回しかない手続きでは、相談が1か月遅れると着工が半年ずれる。待っている間も税は同じ額で出ていく。
