農地転用は行政書士に頼むべき?報酬相場と依頼の判断

農地転用を頼むべきか迷うのは、報酬の相場がページごとに違って見えるからだ。
公的統計では、市街化区域の届出が最も多い回答で5万円、4条許可申請が8万円、5条許可申請が10万円。届出だけなら自分で出せる範囲で、許可申請に同意書と意見書が絡むなら頼む側に倒す(2026年7月30日時点)。
この記事の目次
頼むかどうかの前に、届出か許可かを確定させる
農地転用の手続きは2つに分かれる。市街化区域の農地は、あらかじめ農業委員会に届け出れば許可が要らない。それ以外の区域は都道府県知事(指定市町村ではその市町村長)の許可が必要になる(福岡県・農地を転用するには?、2026年7月30日確認)。窓口はどちらも農地の所在地の市町村農業委員会だ。
伊勢崎市は、届出を毎週金曜締切で受付から2週間、許可申請を毎月10日締切で締切から35日と公表している(伊勢崎市・農地法許可と届出の手続き、2026年5月25日更新/2026年7月30日確認)。届出で済む土地なら、自分で出す選択が現実的な範囲に入る。
農業委員会と市町村の都市計画担当課への照会で分かる。制度の全体像は農地転用とは?費用と期間、許可の条件にまとめた。
報酬の相場は、公的統計の分布で見ると一点では言えない
日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査(令和8年1月実施)から農地関係を抜き出す。
| 手続き | 回答者 | 最も多い回答額 | 平均額 | 最小額から最大額 |
|---|---|---|---|---|
| 農地法第4条 許可申請(自分で転用) | 273人 | 80,000円 | 96,893円 | 8,800円から800,000円 |
| 農地法第5条 許可申請(売って転用) | 501人 | 100,000円 | 120,186円 | 5,000円から1,618,720円 |
| 農地法第4条 届出(市街化区域) | 170人 | 50,000円 | 50,728円 | 3,000円から500,000円 |
| 農地法第5条 届出(市街化区域) | 245人 | 50,000円 | 54,226円 | 3,000円から500,000円 |
| 農地法第3条 許可申請(農地のまま売買) | 493人 | 50,000円 | 58,616円 | 5,000円から500,000円 |
| 農地法第3条の3 届出(相続で取得したとき) | 174人 | 11,000円 | 23,502円 | 1,000円から500,000円 |
| 農用地除外申出 | 239人 | 100,000円 | 135,353円 | 7,000円から1,200,000円 |
(出典は日本行政書士会連合会・報酬額の統計。2026年7月30日確認)
5条許可申請は5万円以上10万円未満が42.1%、10万円以上15万円未満が29.1%で、7割がこの帯に入る。平均額が高いのは最大額が161万円台まで伸びているせいで、平均を基準にすると高く見積もることになる。
同じ許可申請で報酬が倍違うのは、どこまで含むかが違うから
- 現地確認と農地区分(農用地区域か、立地基準で第何種か)の事前調査
- 農業委員会との事前協議。回数が読めず、報酬の差になりやすい
- 位置図・現況図・土地利用計画図の作成
- 耕作者や権利者の同意書の取り付け、土地改良区の意見書の取得
- 許可後の工事進捗状況報告書と工事完了報告書
- 農用地除外の申出、開発許可、分筆や測量が別料金かどうか
行政書士法第10条の2は、事務所への報酬額の掲示義務と、行政書士会と連合会が報酬額統計を公表する努力義務を定めている。ただし統計にも見積書にも立替金は入らない。登記事項証明書の取得費や土地改良区の決済金は実費として別に動く(農地転用の費用と、誰が払うか)。
自分で出す場合、書類は4か所から集めることになる
福岡県は許可申請の必要書類を26項目で公開している。原則として全ての申請に添付するものは次のとおり(福岡県・農地転用の必要書類と様式例、2026年4月14日更新/2026年7月30日確認)。
- 農地法第4条または第5条第1項の許可申請書(原本)
- 申請農地の登記事項証明書。全部事項証明書に限る(原本)
- 地番を表示する図面(法務局備付の地図・公図等)
- 位置図(縮尺1万分の1から5万分の1程度)と付近見取図
- 現況図(縮尺500分の1から2,000分の1程度)と土地利用計画図
- 資金計画書・資金証明書等(原本)と見積書
- 被害防除計画書(一般住宅や植林は申請書への概要記載で可)
案件により、委任状、住民票、相続登記前なら戸籍謄本と相続関係説明図、実測図、造成計画縦横断面図、権利者の同意書、土地改良区の意見書などが加わる。取得先は法務局、市区町村、土地改良区、農業委員会に分かれる。
許可申請そのものに自治体の手数料を置いていない例がある。福岡県の一覧にも伊勢崎市の案内にも手数料の欄はない(2026年7月30日確認)。書類の並べ方と申請先は農地転用の手続きの流れと必要書類に置いた。
頼む側に倒れる条件と、自分で出せる条件
| 案件の型 | 判断 | 浮く報酬と乗る報酬の目安 |
|---|---|---|
| 市街化区域の農地を自分で転用(4条届出) | 自分で出せる範囲 | 約5万円が浮く |
| 市街化区域外で自宅や農業用施設を建てる(4条許可) | 事前協議の回数で決める | 約8万円が乗る |
| 買い手が決まって売って転用する(5条許可) | 頼む側に倒す | 約10万円が乗る |
| 農用地区域内、いわゆる青地 | 頼む側に倒す | 除外の申出で約10万円が別に乗る |
| 土地改良区の受益地に入っている | 頼む側に倒す | 意見書の取得と決済金が別に動く |
| 一筆の一部だけ転用し、残りは農地のまま | 土地家屋調査士との連携が前提 | 測量と分筆の費用が別に乗る |
譲り渡す人と譲り受ける人が連署して出すので、相手の予定に作業速度が縛られる。締切を1回落とすと1か月ずれる。
転用した先に何を置くかが決まっていないなら
転用してから使い道を考えると、造成の仕様も依頼する作業の範囲も決まらない。活用の型と収支の試算を複数社から取り寄せて、成り立つ形があるかを先に見ておくと、依頼の範囲も決めやすくなる。相場を知るだけの利用でも問題ない。
無料で活用プランを取り寄せる農地転用の申請書を作れるのは、行政書士に限られている
行政書士法第1条の3第1項は、報酬を得て官公署に提出する書類等を作成することを行政書士の業務と定め、第19条第1項が行政書士以外の者に「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」これを行うことを禁じている。違反は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第21条の2)。条文はe-Gov法令検索・行政書士法で確認できる(2026年7月30日確認)。名目を問わないという文言は令和7年改正で入り、2026年1月1日施行(総務省・行政書士制度、2026年7月30日確認)。手数料でも調整費でも、書類作成の対価なら報酬に当たる。
会社が段取りを組み、書類作成を提携先の行政書士が受けるなら通常の形だ。担当者が作り、対価が売買代金や手数料に含まれているなら条文に触れる。
浦添市は農地法の申請と補正を、本人・委任を受けた親族・行政書士のみ可能とした(浦添市・代理人による転用等申請手続き、2026年7月30日確認)。うるま市も令和6年4月以降は同じ扱いで(うるま市・代理人による申請手続き)、沼津市も令和7年4月1日から同趣旨の運用に入った(沼津市・本人以外が転用申請を提出する際の取扱い、2025年4月23日更新)。小浜市は農振除外の案内で、資格を有さない代理人からの書類の受付等は行わないと明記している(小浜市・農用地区域からの除外、2025年6月17日更新)。頼めるのは本人、無償で手伝う親族、行政書士になる。
1人では終わらない。士業の分担を先に把握する
| 資格 | 担当する部分 | 根拠 |
|---|---|---|
| 行政書士 | 農業委員会への許可申請と届出、農用地除外の申出、開発許可申請などの官公署提出書類 | 行政書士法第1条の3 |
| 土地家屋調査士 | 地目変更や分筆といった表示に関する登記の調査・測量と申請代理 | 土地家屋調査士法第3条第1項 |
| 司法書士 | 所有権移転登記や相続登記など、登記・供託の手続の代理と法務局への提出書類 | 司法書士法第3条第1項 |
| 税理士 | 譲渡所得や相続税の計算、納税猶予の適用可否 | 税理士法 |
司法書士法第3条第1項の業務は登記または供託に関する手続の代理と法務局への提出書類で、農業委員会に出す転用の申請は入らない。土地家屋調査士法第3条第1項の対象も表示に関する登記と筆界特定だ(e-Gov法令検索・司法書士法/同・土地家屋調査士法、2026年7月30日確認)。弁護士法第3条第2項が当然に行えるとするのは弁理士と税理士の事務で、行政書士は入らない(e-Gov法令検索・弁護士法、2026年7月30日確認)。
依頼先の探し方と、見積もりで確かめること
日本行政書士会連合会の会員検索は、所在地、氏名、登録番号、取扱業務の分類で絞り込める。分類には農地・土地開発がある(日本行政書士会連合会・行政書士会員検索、2026年7月30日確認)。
令和8年4月1日現在の個人会員は54,186人、法人会員は1,719(日本行政書士会連合会・会員数等、2026年7月30日確認)。報酬額統計でも、建設業許可申請(法人・更新・知事)の767人に対し、5条許可申請は501人、4条許可申請は273人だった。
鞍手町は代理申請の際の提示を求めている(鞍手町・代理人が請求するときの委任状、2026年7月30日確認)。
- 報酬に含む範囲。事前調査、事前協議、図面作成、同意書、完了報告のどこまでか
- 実費と立替金の扱い。証明書の取得費や土地改良区の決済金が別立てか
- 農用地除外、開発許可、分筆や測量が必要になった場合の追加報酬
- 支払時期と、取下げや不許可の場合の精算
- 連携する土地家屋調査士や司法書士の費用が別に発生するか
頼まずに進めて詰まるのは、締切と他人の押印
ひとつは締切だ。許可申請は農業委員会の総会に合わせて月ごとの受付締切が置かれている。
もうひとつは、自分の作業では埋まらない書類だ。権利者の同意書や土地改良区の意見書は、相手の押印と発行を待つ。吉野ヶ里町は、転用決済金の納入を領収書等で報告し、納入確認後に意見書を交付すると案内している(吉野ヶ里町・転用決済金、2025年9月2日更新/2026年7月30日確認)。
3つめは前段の手続きだ。農用地区域内なら、転用の前に除外の申出が入る。広島市は受付を年2回(2月末日まで、8月末日まで)とし、手続に約6か月、公告で除外が完了するまで事業に着手できず、申出のすべてが認められるとは限らないと公表している(広島市・農用地区域からの除外手続、2025年3月7日更新/2026年7月30日確認)。小浜市は受付を年2回(3月と9月)、完了まで半年から1年としている。報酬も最も多い回答額10万円が別に乗る。
相談は無料で使える。農林水産省は農村振興局、地方農政局、沖縄総合事務局に相談窓口を設けている(農林水産省・農地転用許可制度について、2026年7月30日確認)。
動かせない待ち時間の間にやっておけること
許可までの1か月から2か月、農振除外なら半年前後は、こちらが急いでも縮まらない時間だ。その間に活用の型と収支の試算を取り寄せておけば、許可が出た日に次の判断へ進める。相場を知るだけの利用でも問題ない。
無料で活用プランを取り寄せる相談先を分けていなかった時期に、月だけが過ぎた
無料で答えが出る窓口と、金を払って任せる作業を分けていなかった
編集部が相続したのは農地ではなく沖縄の傾斜地で、農地転用の申請をした経験はない。
売却、寄付、国庫帰属と順に当たって、どれも成立せず今も保有している。固定資産税は年に約7万円で、決まらない間も毎年出ていく。
照会すれば無料で答えが返る窓口と、書類を作って出す作業を任せる相手を、同じ相談という言葉でひとまとめにしていた。先に無料の照会で土地の条件を紙にして、残った作業だけを見積もりに出す。
区分の確認、締切、前段の手続きの有無は照会で分かる。残るのは図面と同意書と協議という手間の塊で、そこが報酬の対象になる。相続で農地を取得したときの農地法第3条の3の届出は、報酬の最も多い回答額が11,000円と低く、ここだけ頼む選び方もできる。
