空き家の固定資産税が6倍になる条件|管理不全空家とは

空き家を放置すると固定資産税が6倍になる、という話がどこまで本当なのかを確かめに来た人向けにまとめた。
結論は、上がるのは「特定空家等または管理不全空家等」に該当し、かつ市区町村長から勧告を受けた土地だけ。しかも増えるのは土地分のみで、自治体の案内では実際の増え方は3倍程度から5倍が目安とされている。
この記事の目次
「6倍」の正体は住宅用地特例が外れること
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に市区町村が課す税金で、住宅が建っている土地には「住宅用地に対する課税標準の特例」(住宅用地特例)が適用されている。税額のもとになる課税標準額が、この特例で大きく圧縮されている状態が通常だ。特例率は国土交通省の資料と自治体の案内で一致している(2026年7月時点で確認)。
| 区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(住宅1戸につき200平方メートルまでの部分) | 1/6 | 1/3 |
| 一般住宅用地(200平方メートルを超える部分) | 1/3 | 2/3 |
小規模住宅用地の課税標準が6分の1ということは、特例が外れれば計算のもとになる金額が元の水準に戻る、つまり最大で6倍になる。これが「空き家を放置すると固定資産税が6倍」の中身で、税率が引き上げられるわけでも、空き家であること自体に罰金がかかるわけでもない。
見落とされやすいのが面積の上限だ。仙台市の案内では、住宅用地の特例が適用されるのは家屋の床面積の10倍までと明記されている。敷地が広い実家ほど、もともと特例が効いていない部分を抱えている。
特例が外れる条件は「該当」と「勧告」の2つがそろったとき
越生町(埼玉県)の固定資産税の案内は、除外の要件を2つに分けて書いている。仙台市の案内も同じ整理だ(いずれも2026年7月31日確認)。
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)に規定する特定空家等、または管理不全空家等の敷地であること
- 同法の規定による勧告が所有者等になされていること
「指定されたら6倍」と書く記事もあるが、指定だけでは外れない。該当の判断があった上で行政指導が段階を踏み、それでも改善されずに勧告まで到達したときに、はじめて税務部局へ情報が渡って特例が外れる。
管理不全空家等が加わったのは、空家法の改正法(令和5年法律第50号)が施行された2023年12月13日から。それ以前は特定空家等だけが対象だった。
管理不全空家等とは何か(国のガイドラインが挙げる状態の例)
管理不全空家等の定義は「適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にある空家等」(空家法第13条第1項)。抽象的なので、国土交通省のガイドライン(令和5年12月13日最終改正)が別紙で状態の例を挙げている。
| 放置した場合の悪影響 | 管理不全空家等の状態の例 |
|---|---|
| 建築物の倒壊 | 屋根の変形、外装材の剥落や脱落、構造部材の破損・腐朽・蟻害・腐食、雨水浸入の痕跡 |
| 門・塀・屋外階段等の倒壊 | 構造部材の破損、腐朽、蟻害、腐食 |
| 立木の倒壊・枝の落下 | 伐採や補強がされておらず腐朽が認められる、大枝の剪定がされず折れや腐朽が認められる |
| 擁壁の崩壊 | 擁壁のひび割れ等の劣化、水のしみ出し、変状、水抜き穴の清掃がされず排水不良 |
| 部材等の落下・飛散 | 外壁上部の外装材、屋根ふき材、雨樋、看板等やその支持部材の破損・腐食 |
| 健康被害の誘発 | 排水設備の破損、清掃がされず常態的な水たまりや多量の腐敗したごみが敷地にある、駆除がされず動物の棲みつきが常態化 |
| 景観の悪化 | 補修がされず屋根ふき材や外装材の色褪せ・破損・汚損、散乱または山積したごみ |
ただしガイドラインは、管理指針に即した管理を行っていないからといって直ちに該当するわけではない、と明記している。判断は管理の状況だけでなく、その空き家の状態と、周辺の生活環境に及ぼし得る影響の程度を踏まえて総合的に行われる。
特定空家等との違いは「壊せと言われるか」「代執行があるか」
特定空家等は、次のいずれかに当てはまると認められる空家等をいう(空家法第2条第2項)。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
税制上の扱い(勧告で住宅用地特例が外れる)は両者で同じだが、その先の強制力が違う。
| 管理不全空家等 | 特定空家等 | |
|---|---|---|
| 行政の手順 | 指導 → 勧告 | 助言または指導 → 勧告 → 命令 → 代執行 |
| 命令・代執行 | 規定なし | あり |
| 勧告で求められる措置 | 修繕、立木竹の伐採など。除却(取り壊し)は基本的に想定されない | 除却、修繕、立木竹の伐採その他必要な措置 |
指導から増税までの流れと、いつの分から上がるのか
市町村長はまず空家法第13条第1項に基づく指導を行う。指導をしてもなお改善されず、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれが大きいと認めるときに、同条第2項の勧告ができる。指導を経ずにいきなり勧告はできない。
税額が上がるタイミング
固定資産税は1月1日(賦課期日)時点の状況で決まる。越生町の案内は「改善が見られず、固定資産税の賦課期日である1月1日に至ると次年度の固定資産税から課税標準の特例が除外されます」と説明している。年の途中に勧告を受けても、その年度の税額がその場で書き換わるわけではない。次の1月1日までに措置を終えて勧告が撤回されれば、特例が外れないまま年を越せる(2026年7月時点の制度)。
実際には6倍にならないことが多い理由
「最大6倍」は、小規模住宅用地の課税標準が6分の1という前提から出た数字だ。実務でそのまま6倍になるかというと、自治体自身がそうは書いていない。
- 神戸市の案内:住宅用地特例が解除されると、土地の固定資産税が3倍程度増えることになる
- 宝塚市の案内:勧告を受けた管理不全空家等は特例が解除され、土地の固定資産税が約3倍から5倍になる可能性がある。注記として、敷地の面積等で増額割合に幅があるとしている
ずれが生まれる理由は3つある。
- 上がるのは土地分だけ。家屋にかかる固定資産税は住宅用地特例とは別なので、外れても家屋分は変わらない。
- 面積区分で倍率が違う。200平方メートルを超える部分は元から3分の1なので、外れても3倍。
- 住宅用地として扱われる面積に上限がある。家屋の床面積の10倍までなので、庭や畑を含む広い敷地では、そもそも特例の外にある部分が先にある。
それでも都市計画税の軽減(小規模住宅用地で3分の1、一般住宅用地で3分の2)も同時に外れるので、年間の負担は確実に重くなる。課税明細書の土地の欄にある課税標準額と評価額を見比べれば、いま特例でどれだけ圧縮されているかが読める。
勧告を受けていなくても特例が外れる場合がある
国土交通省の資料は、平成27年の総務省固定資産税課長通知を引いて、次の場合は特例の対象となる「住宅」に該当しないとしている。
- 構造上住宅と認められない状況にある場合
- 使用の見込みはなく取壊しを予定している場合
- 居住の用に供するために必要な管理を怠っている場合等で、今後人の居住の用に供される見込みがないと認められる場合
ガイドラインも同じ趣旨を注で示し、こうした家屋は管理不全空家等や特定空家等に該当するか否かにかかわらず、本来住宅には該当しないため、その敷地にはそもそも住宅用地特例が適用されないとしている。
空家法のルートと地方税法上の住宅用地の判定は別々に動いている。判断は市区町村の税務部局が行うので、心配なら課税明細書を持って窓口で確認するのが確実だ。
実際に勧告はどれくらい出ているのか
国土交通省が公表した空き家対策の状況調査(令和5年3月31日時点)によると、空家法の施行(平成27年5月)から令和4年度末までの特定空家等に対する措置は次のとおりだった。
| 措置 | 件数(累計) |
|---|---|
| 助言・指導 | 37,421件 |
| 勧告 | 3,078件 |
| 命令 | 382件 |
| 行政代執行 | 180件 |
| 略式代執行 | 415件 |
助言・指導が3万件を超えているのに対し、勧告は3,078件。大半は指導の段階で終わっている。同じ調査では、空家法の措置およびそれ以外の市区町村の取組により、除却や修繕等が168,198件進んだとされている(うち空家法の措置によるものは22,148件)。総務省統計局の令和5年住宅・土地統計調査では、空き家は900万2千戸、空き家率13.8%、賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家は385万6千戸だった。
ただしこの実績は管理不全空家等が加わる前のもので、対象が広がった後の数字ではない。
勧告を受けた後でも特例は戻せる
ガイドラインの第3章5は、所有者等が指導または勧告に係る措置を実施したことが確認された場合、その建築物は管理不全空家等ではなくなるとし、市町村は勧告をしている場合には撤回すると書いている。
そのうえで税務部局に対しては、勧告が撤回された場合、住宅用地特例の要件を満たす家屋の敷地は特例の適用対象となることから、可能な限り速やかに情報提供することが必要である、としている。
措置が完了した旨の届出書を出し、その写しを受け取っておくやり方もガイドラインに例示されている。改善したのに情報が税務部局へ渡っていない、という事故を防ぐ意味で書面に残す価値がある。
建物とその敷地のいずれについても所有者が変わると勧告の効力は失われ、新しい所有者には指導からやり直しになる。勧告まで行かせない管理の頻度と代行の相場は空き家の管理はどこまで必要?頻度と代行の相場にまとめた。
税額を下げる方向で取れる手は3つしかない
打てる手は次の3方向に収束する。
- 管理して勧告まで行かせる前に戻す。指導の段階で措置を終えれば税額は動かない。費用は年数万円から十数万円の管理代行が目安になる。
- 解体して更地にする。家屋分の固定資産税はなくなるが、土地の住宅用地特例も同時に外れるので、土地分は勧告を受けたのと同じ状態になる。解体費用の一部を補助する自治体もある。
- 手放す。売却できれば、翌年1月1日の所有者から外れる。税負担も管理義務も同時に終わる。
解体の補助金は空き家の解体補助金はいくら出る?条件と申請の順番、税額を下げる手順の全体像は空き家の固定資産税が6倍になる条件と回避の順番で扱っている。
編集部の立場
編集部が相続したのは沖縄の傾斜地で、固定資産税は年約7万円。売却も含めて出口をひととおり検証したが成立せず、いまも保有したまま維持費だけを払っている。6倍の話とは入口が違う土地だが、毎年決まった額が出ていく感覚は同じで、金額の大小より「いつまで続くのか」が効いてくる。だからこの記事でも、倍率の恐怖より、勧告のどの段階にいるかと、いくらで手が離れるかを先に確かめる書き方にしている。いくらなら手が離れるかを先に見る
解体費用を出すか管理を続けるかは、売れる金額が分かってからでないと比べられない。複数社の査定額を並べておくと、年間の維持費と天秤にかけやすくなる。
無料で査定額を調べるよくある質問
勧告に従わないと罰金はありますか
管理不全空家等には命令の規定がないため、命令違反を理由とする過料は生じない。特定空家等については命令の対象となり、これに従わない場合の罰則が空家法に定められている。
空き家になって何年で6倍になりますか
年数では決まらない。空家法に年数の基準はなく、状態と周辺への影響で判断される。5年放置しても勧告が出ていなければ税額は変わらない。
