遺品整理の業者の選び方|見積もりで見る5項目

遺品整理の業者選びは、丁寧そうかどうかで比べても差が出にくい。
先に引く線は許可の1本だ。総務省が69事業者に聴取した調査では、家庭ごみを運べる許可を持つのは34事業者、見積書を作るのは63事業者、契約書を取り交わすのは43事業者だった(2026年7月30日確認)。
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業法がない市場では、最初に引ける線が1本しかない
遺品整理サービスには、名乗るための免許も国家資格もない。総務省行政評価局が令和2年3月に公表した調査結果報告書は、日本標準産業分類に「遺品整理サービス(業)」という分類が独立して存在せず、法令上の定義もいわゆる業法も見当たらないと書いている(2026年7月30日確認)。
遺品を残す物と不用な物に分ける「区分」だけなら許可は要らない。不用品を故人宅から運び出す「収集、運搬」には市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可、古物に当たる物の買取や売却には古物商の許可が必要になる。調査に協力した69事業者の取得状況は次のとおり。
| 許可の組み合わせ | 事業者数 |
|---|---|
| 一般廃棄物収集運搬業許可と古物商許可の両方 | 27/69 |
| 一般廃棄物収集運搬業許可のみ | 7/69 |
| 古物商許可のみ | 32/69 |
| どちらも取得していない | 3/69 |
家庭のごみを自社で運べる許可を持つのは足して34事業者で、半数に届かない。環境省も、家庭の廃棄物を回収できるのは一般廃棄物処理業の許可を持つ業者か市区町村の委託を受けた者だけで、産業廃棄物処理業や古物商の許可では回収できないと案内している(2026年7月30日確認)。
頼める作業の範囲も分かれる。区分した上で搬出まで行うのが45事業者、区分のみが21事業者、搬出のみ・供養・仏壇の引き取り専門が各1事業者。
提携していますで止めない。委託の中身を3つ聞く
一般廃棄物収集運搬業の許可を持たない35事業者が、廃棄物をどう扱っているかの内訳。
- 作業をする市町村の許可業者を使う:18/35
- 自社倉庫等へ持ち帰り、自社から排出された廃棄物として許可業者に処理を依頼する:14/35
- 廃棄物の処理は依頼者が行うこととしている:3/35
報告書は後の2つについて、廃棄物処理法の解釈を踏まえた場合に必ずしも適切ではないと評価され得るものを含む、と注記している。提携先に任せていますという説明は、そのままでは中身が確定しない。北九州市は、提携しているとする無許可の者がそのままごみを運ぶケースがあるとして許可業者による収集運搬かの確認を求め(2026年2月18日更新)、豊田市は不適正な事案では排出者が罪に問われたり撤去費用を請求される場合があると書いている(2024年6月13日更新、いずれも2026年7月30日確認)。
提携と聞いたら、この3つを口に出して聞く
- 運ぶのはどの会社か。社名を答えられるか
- その会社は、作業をする市町村の一般廃棄物収集運搬業の許可を持っているか
- 依頼者が処理施設へ持ち込む前提になっていないか。なっているなら、誰が運転して何回往復するのか
3番目は費用に出る。許可業者に収集運搬を依頼した場合の見積額46万9,200円に対し、依頼者が業者の車両に同乗して搬入した場合の請求額は28万3,716円、差は18万5,484円という例が報告書に載っている。前者には許可業者への処理費用が概算16万円含まれ、後者では依頼者が処理施設で手数料を負担している。
許可は自分で照合できる。名簿と一覧の使い分け
許可の有無は、自己申告を待たずに公表資料で確かめられる。
| 許可の種類 | 出すのは | これで何ができるか | 照合先 |
|---|---|---|---|
| 一般廃棄物収集運搬業許可 | 市町村 | 家庭から出た廃棄物の収集と運搬 | 作業をする市町村が公開する許可業者名簿 |
| 古物商許可 | 都道府県公安委員会 | 古物の買取や売却 | 許可証の公安委員会名と許可番号、公安委員会のURL届出一覧 |
| 産業廃棄物収集運搬業許可 | 都道府県等 | 事業所から出た産業廃棄物の運搬。家庭のごみには使えない | 家庭の遺品整理では判断材料にしない |
横浜市では収集運搬、品目限定、浄化槽、処分業の4種類の名簿が基準日を付けて公開されている。(2026年3月1日更新、2026年7月30日確認)。許可は市町村ごとに完結するので、本社の所在地ではなく作業をする市町村の名簿を見る。対応エリアを限定している事業者が65/69、全国対応は2事業者だった。
許可は増えにくい。市町村による収集運搬が困難であることや一般廃棄物処理計画に適合することなどを満たして与えられる(廃棄物処理法第7条第5項)。聴取した28市町村のうち遺品整理の廃棄物に限った許可を出しているのは4市町村、うち22市町村は新たに付与する予定はないと答えている。
古物商許可は営業所の所在地の都道府県公安委員会ごとに受け、令和2年4月からは主たる営業所の許可があれば他の都道府県は届出で足りる(古物営業法第3条)。ホームページで古物取引を行う古物商はURLの届出が必要で、公安委員会が許可番号と名称と届出URLを一覧で公開している(古物営業法第8条の2)。東京都公安委員会と大阪府公安委員会は、すべての業者が掲載されているわけではないこと、掲載までに期間を要すること、掲載が取引の信用性を保証しないことを明記している(2026年7月30日確認)。載っていないから無許可、とは読めない。
見積もりで見る5項目
見積書は金額を知る紙ではなく、前提を固める紙として使う。49事業者から様式の提供を受けた結果として、業界共通の様式はなく、項目名が同じでも内容が同じとは限らないと報告書は書いている。比べる前に、次の5か所を埋めさせる。
- 単位が積算か一式か。人数、時間、台数、処分量のどれで積んだのかを聞く。一式だと、量が増えたときの根拠が後から決まる
- 廃棄物を運ぶ名義。収集運搬をどの会社が行い、その会社が市町村の許可を持つかを欄か備考に書いてもらう
- 作業日数と完了日。賃貸の明け渡し期限があるなら、日付の入った紙で受け取る
- 追加料金が発生する条件。契約範囲外の作業が出た場合の見解を確認できたのは64/69だが、見積書に追加料金を明記していたのは4/69。記載例は「見積書発行日以降に新たな業務が発生する場合は、追加料金を請求します。」から「処分品の追加がない限り追加費用を請求することは一切ありません。」まで幅があり、いずれも総務省の報告書に載る実例だ。どちらの型かを紙で確認する
- 買取の扱い。買取代金の欄があるか、いつ査定するか。差し引き後の総額だけでは、処分費を他社と比べられない
項目別の内訳と、どこから別料金になるかは遺品整理の費用相場と追加料金の内訳で扱っている。
相見積もりは、条件を揃えないと比べられない
見積りに当たって書面を作成していることが確認できたのは63/69。見積料は62事業者から回答があり、徴収しないが57、遠方の場合が4、複数回にわたる場合が1だった。立会いで見積もる業者が確認していた項目は、作業日程、遺品の残置と搬出と買取りの区別、オプションの希望、搬出する家財の量、トラックの駐車場所、エレベーターの有無の6つ。先に自分で書き出し、同じ内容を全社に渡す。
金額の水準は幅で見ておく。提供を受けた見積書75例の分布は次のとおり。
| 見積額の区分 | 見積書例の数 |
|---|---|
| 10万円以下 | 7 |
| 10万円超20万円以下 | 19 |
| 20万円超30万円以下 | 23 |
| 30万円超40万円以下 | 12 |
| 40万円超50万円以下 | 5 |
| 50万円超60万円以下 | 3 |
| 60万円超100万円以下 | 4 |
| 100万円超 | 2 |
料金の目安を掲載しているのは55/69。
契約書を作らない業者もいる。作らない場合に確認する4点
契約書を作成することが確認できたのは43/69で、うち6事業者は見積書で代替。作成していないのが24/69、理由として必要性を感じないと答えたのが17。見積書と契約書のいずれも作らない事業者が5あった。
契約書を作らない業者を選ぶなら、国民生活センターの助言に沿って次の4点を個別に確認しておく。
- 作業日と作業日数、完了日
- 作業範囲(残す物、搬出する物、買取に回す物の区別)
- 料金と支払い方法、支払いの時期
- キャンセル料の割合と、いつから発生するか
キャンセル料の実例は、当日は見積額の40%、前日は20%を請求するという契約書の記述が報告書に載っている。前払を求めることがある事業者は11/69で、内訳は必ず求めるのが6、依頼者が遠方等で立ち会えない場合が4、料金が一定額を超える場合が1。全額前払いを求められたら、理由がどれに当たるのかを聞く。
立ち会えないときは、残す物の扱い方で選ぶ
原則として立会いを不要とする事業者は14/69。
国民生活センターは、行き違いで意図に反して遺品が廃棄された事案を踏まえ、大切な遺品等を区別して明示しておくことを勧めている。見る条件は3つに絞れる。
- 残す物を先に運び出す、または1か所にまとめて写真で共有する運用があるか
- 作業前後の写真か作業完了報告書が出るか。出るなら、いつ、どの形式で届くか
- 当日に判断が必要になったとき、誰に電話がつながるか
鍵の受け渡しと立会いを誰が担うかは、見積もりの段階で決める。残す物を分ける作業だけ自分でやる進め方は遺品整理を自分でやる手順で扱っている。
資格と団体加盟が保証すること、しないこと
遺品整理士は国家資格ではなく民間の認定資格だ。一般財団法人遺品整理士認定協会は優良企業一覧を公開しており、登録企業は1637社。ごみ袋に事業者名のシールを貼る識別シールの取り組みも説明されている(2026年7月30日確認)。
報告書は全国的な6団体を把握したとし、69事業者のうち48事業者(69.6%)が加盟、20事業者(29.0%)が非加盟だったと書いている。
- 在籍や加盟は、手順や関連法規を学ぶ機会を通った証跡。家庭のごみを運ぶ許可の代わりにはならない
- 品質の保証にはならない。保証を見たいなら、作業中の破損に対応する保険の加入と補償範囲を聞く
作業の範囲そのものは遺品整理とは何を指す作業かで整理している。許可の照合を先に済ませ、資格と加盟は同じ条件の業者が並んだときの補助線に使う。
避けたい型は、相談の類型から逆算できる
平成20年度以降から平成30年5月31日までにPIO-NETに登録された遺品整理に関する相談は755件で、報告書はおおむね9類型に整理している。裏返すと、契約前に落とせる条件になる。
- 現地を見ない金額しか出さない。訪問見積もりを断る
- 書面の見積もりを出さない。出しても作業日数と完了日が入っていない
- 追加料金の条件を口頭でしか言わない
- 全額前払いを求め、その理由を説明しない
- 振込先が会社名義でなく個人名義になっている
- 残す物を先に分けておきたいという要望に、面倒そうな反応をする
見積額33万5,340円の前払を求められた依頼者が、金融機関の窓口で送金先が個人名義だと指摘され不安を覚えた事例が載っている。国民生活センターの分析では、契約金額の平均は約42万円、既支払額の平均は約30万円で、支払い手段の9割以上が即時払いだとされている。
